Side Story 1 それぞれの休日
著/Ryuka

 

ここはユートシティ、近くにレグス王国がある四方が高い防護壁で囲まれた近代都市。その街の中心に位置する場所にある今や大手企業となったZi-worksCorporationが存在する。
この会社は、ゾイド製造、事務業以外にも、ゾイドパイロットの養成も行っている。その中でもゾイドパイロットの技量が特に高い人を社内ではエースパイロットと呼ばれている。
エースパイロットは、単独での依頼請け負いの他、社長直々の依頼も受けている。因みに一般のパイロットは、単独での依頼の請け負いは出来ず、必ず2人以上と決まっている。
現在のエースパイロットは、ヒロキ・バラート、イズキ・ラピレス、ライサー・シャナルの3人である。
今日はZi-worksCorporationが休みという事で、彼らの休日の過ごし方を見てみる事にしよう。

 

* * *

 

「ん〜、折角の休みだし、庭の手入れでもしようかな」
そう言って僕は、服を着替え、家の庭へと出た。
僕の名前はヒロキ・バラート。Zi-worksCorporationのエースパイロットとしてZi-worksCorporationに働いている。
今日は会社が休みなので、庭の手入れでもしようかなと思って、最近忙しくて全然手入れできてなかったしね。
「うわ〜、結構雑草生えちゃってるな、それと最近水あげてなかったから花達も少し元気ないな〜」
僕は無造作に生えている雑草に手を掛け、次々と抜いていく。中には長いのもあって、抜くのに手間取ったけど、しばらくする内に全ての雑草を抜き終えた。
これからは定期的に雑草抜いていかないと、折角の栄養分が雑草に持っていかれちゃうからね。
「さてと、この抜き終えた雑草をゴミ袋に集めて、と」
「次は花達にお水をあげなきゃ」
そう言って僕は物置からホースを持ってきて、ちゃんと元栓がホースに繋がっている事を確認した後、元栓を緩めすぎない様にひねり、ホースから水を出す。
だって、あまり水の勢いが強いと逆に花を傷付けちゃってかわいそうだしさ。
「ほ〜ら、お水だよ〜。最近あげてなくてゴメンね」
時折花に話しかけながら庭の花達に水をまく、花達はそれに答えた、かの様に見えた。
「やっぱり花っていつ見ても綺麗だよな〜、心が自然と安らぐって言うか、優しくなれる気がするんだ」
僕はそんな独り言を呟いていた。
「この綺麗に咲く花達のように、平和な時代が続くといいな」
僕は正直言うと争い事は好きじゃない、例え理由があるにしたって、どうして殺し合うまで争わなきゃいけないの?
特に戦争とか紛争とかなんて、全く罪の無い人達までどうして殺さなきゃならないの?可愛そうじゃん、酷過ぎるよ!
戦争を仕掛けたい人達の気持ちは僕には分からない、分かりたくも無い気がする。それ以外にだって解決する方法だって他にもある筈じゃないか。
どうして人間って力で抑え込もうとするのだろうか。僕には全然分からない。
僕は時々そんな事を思うことがある。何故戦争が無くならないのか、何故人を殺さねばならないのか
そうして僕は水やりを終え、元栓を締め、ホースを元の物置へ戻す。
「いずれ僕も戦わなければならない時が来るのだろうか、あんまり来ては欲しくないなぁ・・・」
そう言って僕は家の中へ戻っていった。

 

* * *

 

「へぇ〜、こんな事があったのか」
そう言ってパソコンの画面と睨めっこしていた。俺の名前はライサー・シャナル。Zi-worksCorporationのエースパイロットをやっている訳だが。
今日はZi-worksCorporationが休みだ、俺は休みの日は大体パソコンと睨めっこしている。様々なジャンルのニュースを見たりしている。
後は友人に頼まれた物をパソコンで作ったりもしている。今日はある友人にWebページの製作を頼まれていたので、その作業をしつつ、ニュースを見ていた。
「とある地方の物価がまた値上がりしたそうか・・・、地方によっては景気の良し悪しも様々だな」
「またとある地方では政治の混乱による暴動騒ぎが相次いで起こっているのか、これはこれで大変だな」
最近の世の中は相次ぐ物価の値上がりに、政治の混乱と、あまり良い事がないみたいだな。幸いここユートシティは、値上がりも政治の混乱も起こってないようだが、こういうのはいつ起きるのか分からんからな。
そういうのに一番振り回されるのは政治家とかじゃなくて国民だったりするからな。国民も政治に対する不信感が高まる原因にもなってる訳だ。
そういう時に限って、政治家達はまるで他人事かの様な言い訳をしている。政治家達は国民の気持ちを分かってない気がするのはきっと俺だけではないはずだ。
それはともかく、さっさと頼まれたWebページの製作をしなければ
「これはこうで、それはそこで、と」
友人からのメールを元に製作していく俺、途中何度か休憩を入れたりもした。数時間のパソコンの睨めっこの末、
「やっと完成だ〜、これでようやく終わったぜ〜」
俺は完成したWebページを確認した後、友人にこの完成したのをメールに添付して送信した。
「んあ〜、しっかし疲れたな、少し寝るかな」
そう言い俺はベットに潜り、暫くしない内に夢の中へ入っていった。

 

* * *

 

「うん、分かった。今から行くよ」
そう言って電話を切り、出掛ける準備をするあたし。あたしの名はイズキ・ラピレス。父さんがやってるZi-worksCorporationのエースパイロットをやっている。
今日は父さんの会社が休みという事で、あたしは友達のアリサが一緒に買い物に行こうと誘われたので、行くことにした。
「またアイツの事だから行くとこは決まってるだろうしな」
内心呆れ気味だった。アリサは可愛い物好きだから、一緒に買い物に行くとその系統の店ばかりに行く羽目になるからだ。別にあたしは可愛い物は嫌いじゃないけど、その系統の店はちょっと苦手かな
あたしは家を出て、アリサがいる待ち合わせ場所に向かい、アリサと合流する。
「あ、イズキ〜、遅いよ〜」
「ゴメンゴメン、待たせちゃったみたいで。じゃあ、行こうか」
「うん。」
こうしてあたしはアリサと一緒に買い物をする事に、その途中、「そういやさ、イズキの働いてるとこにすっごく可愛い子いたよね〜」
「可愛い子?それってヒロキの事?」
「そう、その子の事。ヒロキ君ってすっごく可愛いよね。まるで女の子みたい。と言うか本当は女の子じゃないの?」
「違うっての。一応ヒロキは男だ。確かにあたしから見ても女の子っぽくは見えるけど」
「でしょ。絶対女の子ものの服とか似合いそうじゃん」
「それはダメだろ。ヒロキにだって男のプライドってのがあるかもしれないし」
「え〜、そういうの無さそうだったけど」
「無さそうでもダメなものはダメ!」
全く、いつもの様にアリサの暴走が始まった。これには流石のあたしも着いていけない。
しかもヒロキを女装させようとしてたなんて、とんでもない奴だ。あくまでヒロキは男なんだぞ。
「ところでどうしてヒロキ君の事でそんなにムキになるのかな〜?もしかしてイズキ、ヒロキ君の事好きなんじゃ・・・」
「うぁ、ば、バカ!そんな訳無いだろ!」
「その割には随分と取り乱してる様だけど」
「う・・・それは・・・」
言い返せなかった。確かにヒロキの事は嫌いじゃない。だけど、そ、そのつまり、恋愛対象とかじゃなくて、何と言うか・・・
「それは、つまりどういう事?」
「ほ、ほらアイツってさ、何と言うか、お、男なのに頼り無さそうじゃん。だからほっとけないと言うか・・・」
「それって、間接的に好きって事じゃ」
「う、うるさーい!違うったら違うんだー!」
「もう素直じゃないな〜、この照れ屋さん」
「だから違うって行ってるだろー!!」
やっぱりそういう面ではアリサの方が一枚上手なのかもしれない。だからってあたしがヒロキの事・・・好きなわけ無いだろ。
アイツは男のクセにナヨナヨしてて頼りないって言うか、何か心配でほおっておけないだよ。ただそれだけなのに何であたしったらムキになったり顔真っ赤になったりしてるんだろ
そうしている内に、目的の店に着いた。やっぱり店中所狭しと可愛い物が並んでいる。あたしにはこの感じがどうにも合わない。するとアリサが
「ねぇ、これ可愛くない?」
「あぁ、そうだね」
「何か随分興味無さそうな返事だね〜」
「興味無さそうで悪かったな」
「イズキも少しはさ、その男の子みたいな格好やめたら?」
「うるさいな〜、あたしはこういう格好が好きなんだよ」
「格好が好きだからって・・・、イズキも女の子なんだからたまには女の子らしい格好もしないと」
「あたしには女の子みたいな格好は似合わないって!」
「そうやってすぐ決め付ける。私にはそうは見えないけどな〜」
「似合わないったら似合わない!」
「あ、そう・・・、ところでさ、前から気になったけど、どうしてスカートとか履くの極端に嫌がるよね。何で?」
「だって、スカートの中って、スースーして嫌だし」
「・・・・・・は?」
「は?って何で?」
「当たり前でしょ!何女装された男の子みたいな理由!?しかもそれだけぇ!?」
「とりあえずはそれだけ、って普通はそうじゃないのか!?」
「そうじゃないわよっ!アンタ本当に女の子!?」
「一応これでも女の子だ、ただ小さい頃はいっそ男の子とばっか遊んでたからな」
「だからいつも男の子みたいな格好してるし、性格も男っぽくなったのか・・・」
「どういう意味だよ、それ」
「何でもないわ」
確かに言われてみれば小さい頃は女の子らしい事をした覚えは一つも無いような、というかいつも男の子と混じって遊んでた記憶しかないな。
あたしがスカートを履きたくない理由ってそんなもんなんだと初めて知った。普通は恥ずかしがったりはしないのか。それじゃ恥ずかしがってるあたしが変って事?
あたしも女だけど、女心についてはよく分からない事ばかりだ。
「買うもん決まったの?」
「うん、これにしたの」
と、アリサが見せてきたのは少々大きめのウサギのぬいぐるみだった。いかにもアリサらしい感じだった。そういやアリサの部屋はぬいぐるみがたくさん置いてあった気がする。それでもまだ買う気なんだろうか。
「どう?」
「アリサらしくてあたしは良いと思うよ」
「ホント!?じゃあこれと同じのをもう一つ買おうと」
「そうか、ん?ちょっと待て、同じのをもう一つ買うってどういう事?」
「決まってるじゃない。私とイズキのをそれぞれ一つずつ」
「あたしの!?別にあたしのはいいよ」
「お金なら大丈夫だけど」
「そうじゃなくて!」
「あ、分かった。自分には似合わないからと思ってるでしょ」
「う・・・」
やはり読まれてたか、アイツ意外と勘がいいからな
「やっぱり図星みたいね。でも友達が買ってあげるって言ってるんだから、ここは嫌でも素直に気持ちを受け取るべきよ」
「そうなのか、じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
「分かればいいのだ」
結局アリサとあたしの分のをアリサが買う事に、ぬいぐるみ代をアリサに渡そうとしたが、「これは私からのプレゼント」と言って、あたしの方に返してきた。
たまにはこういう物買ってもらうのも悪くないかもな。流石に毎回はちょっと嫌だけど。
買い物を済ませ、アリサと別れ際に「今日はありがとな、あたしの為にこのぬいぐるみ買ってもらって」
「な〜に、私達友達同士だから当然じゃない。それに」
「それに?」
「それにイズキが少しは女の子らしくなってくれるかな〜、って思ってさ」
「あはは、そうしなくたってあたしは女の子だよ」
「そうじゃなくて、私はイズキが内面的に女の子らしくなってほしいの」
「そういう事か」
「そういう事。それじゃ私の家はあっちだからそろそろお別れだね」
「だな、じゃまた今度な〜」
「えぇ、また今度ね〜、イズキも少しは女の子らしくなりなさいよ〜」
「はいはい」
そうしてアリサと分かれたあたし。友達か、そういうのも悪くない気がする。
女の子らしくか、案外あたし自身気づいていなかったけど、アリサから見ると今のあたしは男の子っぽいか、たまには女の子らしい格好してみるのもいいかもな。
気付けばもう空はすっかりオレンジ色に染まっていた。夕食はヒロキでも誘ってどっか食べに行こうかな。
そう言ってあたしはヒロキの住んでる家へ向かった。

 

* * *

 

辺りは薄暗くなりだした頃、あたしはヒロキの家の前に来ていた。何せヒロキは植物が好きなので、家の目の前に庭があるので分かりやすかった。
しかしあたしはいざヒロキを誘おうとすると急に恥ずかしくなり、顔が真っ赤になっていた。
どうしてだろう、ただヒロキに食事を誘おうとしているだけなのに、こんなに胸の高鳴りが収まらないなんて。
いつまでのここに留まっていてはラチが開かないので、思い切ってあたしはヒロキの家のインターホンを押す。
ピンポーン
「はい、ヒロキですが」
「あ、あのさ、イズキだけど、ちょっといい?」
「別に僕はいいけど、どうしたのイズキ、急に?」
「悪いんだけど、玄関まで来てくれない?」
「いいよ。ちょっと待っててね。」
そうヒロキが言った後、インターホンの通信が切れた。この間あたしの胸の高鳴りは収まってない。
すぐに玄関の戸が開き、中からはヒロキがいた。
「どうしたのイズキ、こんな時間に」
「ひょっとしてもう夕食済ませた?」
「いや、まだだけど。それがどうかしたの?」
「あ、あのさ、折角だからふ、二人でご飯食べに行かない?」
「いいけど、どうしたの?さっきから顔が真っ赤だけど」
「あ、いや、何でもないよ、何でもない・・・」
「そう、じゃあ行こっか」
ヒロキは無垢な笑顔であたしを見ている。あたしは思わず顔を背けそうになった。もしかしてこれがアリサの言っていた事かもしれない。
本当にあたしはいつの間にかヒロキの事が好き・・・になっていたのかもしれない。ヒロキはまだ何も気付いていないかもしれない。
いつかあたしの想いがヒロキに伝わる日がくるのだろうか。今のあたしには全く分からなかった。
「そういやイズキが食事に誘うなんて初めてだよね」
「確かに言われてみればそうかもな」
「ねぇ、どこで食べに行く?」
「お前の好きな所でいいよ。あたしが奢るからさ」
「ホントにいいの!?じゃああそこのレストランに行ってみようよ、美味しいって評判らしいから一度行ってみたかったんだ」
「じゃ、そこで決まりだな」
あたしとヒロキはそのレストランへ向かっていった。

 

Side Story 1 完