#10 双方の激闘
著/Ryuka

 

ローダがシーパータウンへ向かった一方で、依頼の為、偶然この近くに来ていたヒロキ達。
「ねぇヒロキ、ヒロキがくれた髪留め付けてみたんだけど、・・・似合ってるかな?」

モニター越しでイズキはヒロキからプレゼントしてもらった髪留めを付けた姿をヒロキに見せていた。
「うん、とっても似合ってるよ」
「そんなに褒められると恥ずかしいじゃない!」
ヒロキの褒め言葉に、顔を紅潮させるイズキ。そんな2人のやり取りをモニター越しで見ていたライサーは半ば呆れていた。
「喜び合ってるのはいいが、せめて仕事以外の時にしてくれ。今は仕事中だ」

呆れながらもデレっとしてるイズキに突っ込みを入れるライサー。
「うるさいなぁ〜、ただヒロキにこの髪留めが似合ってるか聞いてただけじゃん」
「でもライサーの言うとおり今は仕事中だから、プライベートな話は控えた方が良さそうだね」
「う、うん・・・」

ヒロキの一言でイズキは大人しくなった。
「さてと、とりあえず場所が広いから、これから三手に別れて行動しようか」
「そうだね、終わったらこの場所に集合でいいかな?」

これから3人それぞれで行動し、終わったら今いる場所に戻るという事をヒロキとライサーが提案した。

「そうだな、あたしは賛成だよ」
「じゃあ早速行動開始だな」
3人はそれぞれ別れて行動を開始した。

 

* * *

 

少し時が経ち、それぞれ依頼が終わった頃。ヒロキは集合地点へと向かおうとしていた。
「よし、この辺りの野良ゾイドは大人しくさせたから、集合地点に戻ろうっと」
集合地点に向け歩き出そうとした時、突如ブレイジングウルフSA目掛けキャノン砲が飛んできたが、ヒロキはそれを何とかかわす。

「あっぶないなぁ〜、いきなり何なんだよ!?」

ヒロキはキャノン砲が飛んできた方角を見ると、木陰からゴジュラスキャノンを背負った赤い凱龍輝の姿があった。
「あれは、赤い凱龍輝!もしかしてこの前のガイロス帝国の軍人!?」
「久し振りだな」

そう言いヒロキの目の前に現れる赤い凱龍輝、グラドが乗るブラッディブレイクであった。
「この前も言ったと思うけど、僕は君と戦う理由なんて無いよ!」

あくまでヒロキはグラドに対して戦いの意思はない。
「お前の事情など俺には知らん事だ、俺が戦いたい様に戦うだけだ」
そう言い、ゴジュラスキャノンを放ってくるグラドのブラッディブレイク。
「どうして君はそんなに戦いたいのさ!」
攻撃をかわしつつ、グラドに問い掛けるヒロキ。
「そんな事聞いてどうする?」
「・・・やっぱり僕の言う事を聞いてくれないみたいだね。だけど僕は君と戦うつもりはこれっぽちも無いよ」
ヒロキはひたすらグラドの攻撃をかわし続けていた。決してヒロキが攻撃してくる事は現時点ではなかった。

一方イズキも集合地点へと行こうとしていた。
「やっと終わった〜、それじゃ戻るかな」
その時、何処からかレーザーが飛んできた。イズキは慌てて避ける。
「な、何だいきなり!?」
「あら、てっきり野良ゾイドかと思いましたわ」
現れたのは背中にカノントータスの甲羅を乗せた様な赤いコマンドウルフだった。
「さっきのレーザーはアンタが撃ったのか!?ところでアンタは誰だ!?」
「そうですわ、わたくしの愛機のリストリクトでね」
この赤いコマンドウルフは、リストリクトと呼ばれる機体の様だ。
「だからアンタは一体誰なんだよ!」
さっきの攻撃でキレ気味になっているイズキが、リストリクトのパイロットに問い掛ける。
「申し遅れましたわ、私ミレン=オプソディと申しますわ。そちらこそまだ名乗って無いのでは?」
「あ、そうだった、あたしはイズキ=ラピレス、ってそんな事よりアンタがどういった理由でわざとらしくあたしに攻撃したのかは分からないけど、その分たっぷりと仕返ししてやるからな!」
「あ〜、怖い怖い。それにしてもあなた女の割りには随分と荒っぽいこと」
と嫌味な笑みを浮かべて話すミレン、その喋り方がイズキに火に油を注いでいた。
「うっさい!アンタなんか絶対に倒してやる!」
イズキの乗るクイックサイクスは、ミレンの乗るリストリクトに向かって飛びかかった。

二人が交戦中の中、ライサーはというと、
「ん?爆発音?近くで戦闘が行われている様だな、それも二つの方角からだ。確かその方角はヒロキとイズキがそれぞれ行っているはずだが・・・」
立ち止っているライサーが乗るアグレッシブの後ろに、何かが近づいて来る。
「誰だ、そこにいるのは?」
「既にバレていたという訳か」
背後から姿を見せたのは白い恐竜型ゾイドだった。
「あんた何者だ?」
「俺はレミュエル=クラシス。ガイロス帝国の兵士だ。あなたは?」
「俺はライサー=シャナル。Zi-worksCorporationのエースパイロットだ」
Zi-worksCorporationのパイロット、以前にも似たような格好をした少年を見た気がするな・・・)
ライサーの格好を見て、以前会ったヒロキの事を思い出していた。
「ところでガイロスの軍人さんがこんな所に何のご用で?」
「この周辺地域の調査にな。そちらこそどういった理由でここに?」
「依頼で野良ゾイドの駆除にな、俺以外にもあと2人いるんだが、今は別行動をしてる」
「偶然だな、俺もあと2人連れているんだが別行動中だ」
と、ライサーがふとこんな事を思った。
「まさかとは思うが、それぞれ別行動してる奴らと鉢合わせして戦闘って事は・・・」
「ある訳が・・・、いや、あるかもしれん」
「同感だ」
意見が合致するライサーとレミュエル。
「もし戦闘を行ってると仮定して、俺ら二人で戦闘を止めさせるってのはどうだ?」
ライサーの提案にレミュエルは
「いいだろう、何と無く君とはどこか似ている気がしてな」
「俺もだ。爆音は確実にこちらに近づいている事から、恐らくここに出てくるだろう」
「下手に動くよりも待ち伏せして迎え撃つって訳か」
「そういう事」
他の二組と違い、意気投合したライサーとレミュエルは、迫り来る爆音が二組のものである事に備え、待ち伏せをする。

 

* * *

 

その頃、グラドのブラッディブレイクの攻撃から避け続けるヒロキのブレイジングウルフSA
「どうした、何故戦わない?」

執拗に攻撃するグラドに対し、回避だけで反撃をしようとはないヒロキ。
「何度も言うけど、君と戦う理由は無いよ」
「お前、つくづく甘い奴だな」
退屈そうな顔で言うグラド。
「確かに君の言う通り僕は甘いのかもしれない、でも」
「でも何だ?」
二人はいつの間にか戦いの手を止めていた。
「君は戦う事に何か意味があると思った事があるの?」
訴えかける様にグラドに聞くヒロキ。
「そんな事考えた事無い、戦いがあるからこそ今の俺がいる」
「そうなんだ・・・、それじゃ仕方ないね、君の言う通り僕も戦う事にするよ」
「そうでなくてはつまらんからな」
そう言い互いの機体は向き合う様にして走り出した。
「俺の愛機、ブラッディブレイクの力、とくと見るがいい」
そう言い、ブラッディブレイクのバスタークローがブレイジングウルフSAに襲い掛かる。
「僕だってあの時とは違うんだ!」
ギリギリのところでかわし、すかさずキャノンで反撃する。ブラッディブレイクは攻撃の反動でかわし切れず、ヒットする。
「フッ・・・、少しはやる様だな」
「僕はあの時と同じだなんて思わない方が良いよ」
ブラッディブレイクは素早く体勢を立て直し、ゴジュラスキャノンを放つ。
「うわぁ、凄い破壊力だ・・・」
ブラッディブレイクの攻撃をかわすものの、高い火力に少々ビビるヒロキ。
「でも僕だって負けられないね、一人のエースパイロットとして」
恐怖を振り払い、ミサイルで牽制しつつブラッディブレイクに近付き、飛び掛かって右前足を振りかざすがかわされ、すぐさま尻尾で反撃する。
「うぐっ、でもなんちゃってね」
ニヤリと笑うヒロキ、ブレイジングウルフSAの3連キャノンでブラッディブレイクの尻尾に向かって撃ち、狙い通りに当てる。
「ちぃ!」
キャノンの反動でバランスを崩すブラッディブレイク、その隙をヒロキは見逃さなかった。
「僅かな隙も逃さないよ!」
ブラッディブレイク目掛け、ブレイジングウルフSAは思いっ切り体当たりする。
「くっ、隙を突かれたか!」
体当たりされ吹っ飛び、地面に叩きつけられるグラドのブラッディブレイク。その際に左側のバスタークローが外れた。
「どうだ!さっきの飛び掛かりはフェイントだったんだ、尻尾での攻撃を誘う為にね」
以前の戦いと比べると、多少強くなっただけで無く、多彩な攻撃方法を身に付けていたヒロキ。これもみなローダの特訓があってこそである。
「まさかそう来るとはな、面白くなってきたぜ」
次の瞬間、もう一方のバスタークローを強制排除し始めた。
「え?」
突然のグラドの行動に理解出来ないヒロキ。するとグラドは
「これだけあれば十分だ」
バスタークローを取り払い、ゴジュラスキャノンだけ背負った状態になったブラッディブレイク。
「さあ第2ラウンドの始まりだ」
そう言ってゴジュラスキャノンを放ちながら接近してくるブラッディブレイク。
「あんな大きなキャノンを撃ちながら動くなんて、相当機体に負荷を掛けてるに違いないよ!」
何とか攻撃をかわすが、ヒロキは驚くのも無理は無い、本来ゴジュラスキャノンは文字通りゴジュラス用の大型キャノンであり、発射時の反動はかなりのもので、ゴジュラスですらそう簡単には動けないはずだが、ましてやゴジュラスより小さいフューラー系であるブラッディブレイクが普通に動きながら撃つ事がありえないからだ。
「多少のリスクを負ってでも攻撃するのが俺のやり方だ」
発射時の反動なんかお構いなしにゴジュラスキャノンを撃ちまくるブラッディブレイク。その内の1発がブレイジングウルフSAに当たった。
「うわぁ!!」
機体は物凄い衝撃を受けた。今ので右前足のアーマーが砕けるだけで無く脚部のフレームにもダメージを受けた。
「今ので右前足のアーマー破壊、それだけで無く脚部損傷で運動性能30%程ダウンか・・・、さすがに逃げるしか無いね」
そう言い、右前足をやや引きずる感じでブラッディブレイクから逃げる様にして走るブレイジングウルフSA。ブラッディブレイクも後を追う。
「逃がすか!」
ゴジュラスキャノンを撃とうとするが、先程の動きながら撃ったり、何発も断続的に撃ち続けた事で、機体に相当な負担が掛かり、これ以上撃てなくなっていた。
「クソッ!こんな時に限って・・・」
グラドは仕方が無く、ビームバルカンでブレイジングウルフSAを追撃するが、ブレイジングウルフSAも必死にかわし続ける。
「ふぅ〜、これじゃかわすのもやっとだよぉ〜」
2機はライサーとレミュエルのいる方向へと知らずに向かっていた。

こちらも戦闘モードのイズキとミレン。と言うより正確に言うと、イズキがミレンの挑発に乗せられ、それに怒って攻撃してるだけである。
「このぉ!」
怒りで冷静さを失ってるイズキは、ミレンのリストリクトに向けバスタークローを突き刺そうとするが、そこにはリストリクトの姿が無かった。
「くそぅ・・・、アイツどこ行った?」

イズキは辺りを見回すが、リストリクトの姿が見当たらない。
「ここよ、怒りんぼさん」

「何!?」
クイックサイクスの横の木陰からレーザーが飛び込み、クイックサイクスにヒットする。
「うわぁ!」
倒れるクイックサイクスに近づくリストリクト。
「威勢が良いのは声だけなのかしら?」
イズキを小馬鹿にする感じで言うミレン。
「言わせておけば好き放題言いやがって、調子に乗るなぁ!」
起き上がると同時にバスタークローで攻撃するイズキ、だがミレンにはあっさり読まれてしまい、かわされる。
「何で、何で当たらないんだよっ!」
「あなた、馬鹿の一つ覚えみたいに同じ攻撃しかしてこないじゃない、それじゃかわされて当然だわ」
ミレンの言う通り、イズキはさっきからバスタークローでの突撃ばかりしかしていない為、攻撃パターンを読まれるのは当然の結果だった。
最も、冷静さの欠けた今のイズキには他の攻撃方法なんて頭に無かった。
「あたしはアンタのその偉そうな言葉にムカつくんだよ!どうせ大して偉くないくせに」
その言葉にミレンの勘に触った。
「あなたこそ男でも無いのに、男みたいな喋り方をするのが私には気に食わないのですわ!」
「何だとぉ!アンタこそさっきからレーザーでしか攻撃してないじゃない!よくそれで人の事言えるよね!」
「何よ!あなたの様な接近戦バカには言われなくありませんわ!」
互いに罵り合いながらいがみ合う二人、まさしく「犬猿の仲」そのものである。
「ふん、そこまで言うならこのリストリクトの火力をとくと思い知りなさい!」
そう言ったミレンは、装備されている全ての火器をイズキのクイックサイクスに向け連射した。
「確かにあれだけの火器を一斉に撃てば相当な威力だけど、あたしのクイックサイクスにだって強力な接近戦武器があるんだから!」
そう言い、多少当たりながらもリストリクトに接近するイズキ。
「またワンパターンに接近戦ですか、もう見飽きましたわ」
とまた同じ攻撃をしてくるだろうと思ったミレンだが、その読みは外れた。クイックサイクスは、リストリクトのサイドに回り、何故か手前で立ち止まった。
「な、何のつもり!?」
「こうする為さ!」
クイックサイクスのバスタークローを展開し、Eシールドを発生させる。
「きゃあ!」
丁度ま近くにいたリストリクトは、発生したEシールドによって弾き飛ばされた。
Eシールドは敵からの攻撃を守るだけじゃなくてこういう風に攻撃にも使えるからね」
「何ていう荒っぽいやり方・・・、でもあなたらしいわね」
起き上がったリストリクトはキャノンで攻撃するが、機動面でも優れているクイックサイクスは難無くかわす。
「そんな亀の甲羅みたいなの背負ってるから動きが鈍いんじゃないの?」
「何ですって!言わせておけば・・・」
イズキの言う通り、リストリクトは背中にカノントータスの砲台らしき物を付けており、動きはクイックサイクスに比べると鈍い、だがその分防御力があり、撃たれ強いという面もある。
「それにしてもすばしっこい奴ね、どこ行ったのかしら?」
と辺りを探すミレン、その時。
「あたしはここさ!」
「何!?」
ミレンが振り向くと既に飛び掛かって来ているクイックサイクスがいた。ミレンはかわそうとリストリクトを動かすが、機動力の低さからかわし切れずに、クイックサイクスに馬乗りされる。
「こんな攻撃、アンタにとっては屈辱的だろうねぇ〜」
「あなた!そこどきなさいよ!」
リストリクトはもがいて逃れようとするが、クイックサイクスがかなりの力で押さえ込んでおり、動く事が出来ない。
「嫌だ、今のあたしすっごく機嫌悪いから」
そう言って、クイックサイクスは何度も爪を振り下ろし、攻撃をした。
「きゃあああ!!」
ミレンの悲鳴をよそに、攻撃を続けるイズキ、やがてリストリクトに装備されてる片側のキャノンを破壊したと同時にリストリクトから離れた。
「これでもうワンパターンじゃないでしょ」
ようやく起き上がったリストリクト、今度はミレンの怒りが爆発する。
「あなた・・・、もう絶対に許しませんわ!」
「あ〜、怖い怖い、恐ろしいですわ〜」
わざとミレンの口真似をして挑発するイズキ。
「人におちょくられるのがこんなに不愉快だと思ったのは初めてですわ、もう後悔しても遅いですわよ!」

「後悔なんてする訳ないじゃん」
何だかんだでいつの間にか立場が逆転していた。
「悔しかったらあたしに追いついてみなよ」
そう言い、森の中へと走って行くイズキのクイックサイクス。
「このぉ〜、待ちなさ〜いっ!」
ミレンのリストリクトは、すかさずクイックサイクスの後を追った、その先にライサーとレミュエルが待ち構えている事に二人は知らなかった。

 

* * *

 

一方、意気投合したライサーとレミュエルは、こちらに迫ってくる爆音に備え待ち構えていた。
「さっきも言いましたが、もし俺とライサーの仲間が交戦している様な事があれば・・・」
とライサーに聞くレミュエル。
「俺達で止めてみせるまでだ。と言った矢先からもう来たみたいだぜ」
ライサーのアグレッシブの向く方向から爆風が巻き起こった。
「それじゃ行くぜ、レミュエル」
「あぁ」
ライサーとレミュエルの機体は爆風が起こった方向へ向け走り出した。

その頃、未だにミレンのリストリクトがイズキのクイックサイクスを追い掛けていた。
「ちょっと〜!いい加減止まりなさいよっ!」
リストリクトはレーザーやキャノンを撃ちながら走っていた。狙いは勿論クイックサイクスだ。
「や〜だね、アンタのゾイドが遅いだけじゃん」
そう言いながらリストリクトの攻撃をかわし続けるイズキ。後ろを振り向いている程の余裕を持っていた。
「あの調子じゃ追いつかれる事は無いよな」
すっかり調子に乗ったイズキは、顔を正面に向けたその時、目の前に大型の狼型ゾイドがいた。
「えっ!?う、うわっ!?」
慌ててクイックサイクスを停止させるイズキ、クイックサイクスは狼型ゾイドの目の前で停止した。
「ったく、いきなり目の前に出てくんなよ!・・・ってこの見覚えのある機体、もしかしてライサー!?」
「予想はしていたが・・・、やはりお前だったか」
クイックサイクスの目の前にいたのは、ライサーのアグレッシブだった。
「ライサー、何で邪魔するんだよ!」
ふくれっ面になりながらライサーに言うイズキ。
「お前何しに来たと思ってるんだ?暴れる為じゃないよな」
「それはそうだけど・・・」
正論を言うライサーに、返す言葉を失うイズキ。するとクイックサイクスの背後から、リストリクトが追い付いてきた。
「や、やっと追い付きましたわ、覚悟なさいっ!」
「やはりお前も一緒か、ミレン」
「その声は、レミュエルさん!?」
アグレッシブの隣からレミュエルの乗る白い恐竜型ゾイドが姿を現した。
「任務を忘れて何してるんだ?」
「す、すみませんでした・・・」
レミュエルに謝るミレン、さっきまでの強気はどこへやら、すっかり気が小さくなっていた。
「怒られてやんの〜」
「お前も人の事言えんだろ」
「う・・・」
当然のごとく人の事は言えないイズキであった。
「ミレンが迷惑掛けて申し訳無かった」

ミレンの事で謝罪をするレミュエル。
「そうだ!先に攻撃してきたのはアイツなんだぞ!」
「お前は黙ってろ、どちらにせよこちらも迷惑を掛けてすまない」
納得のいかないイズキをよそにライサーはレミュエルに謝罪する。

「よくもあそこまで攻撃してくれましたよね!」
「ミレン、お前も少し黙ってるんだ」
「ぬぅ・・・」

一旦落ち着いたかと思えば、再び目を合わすとイズキとミレンがいがみ合いを始めていた。
「「んぬぬぬ・・・」」
「「フンッ!」」
お互い顔を背ける二人、これを見ていたライサーとレミュエルは「仲の悪さ相当なもんだな」という顔で見ていた。

「そんな事よりももう一方の爆風も気になるな・・・」
とレミュエルが言った。
「じゃあ行ってみるか、二人ともそこにいてくれよ」
ライサーが二人に言うも、相変わらず顔を向き合おうとしない二人。
「こりゃ暫く続きそうだ・・・」

「そうだな・・・」
そうライサーとレミュエルは言い残し、イズキとミレンを残しこの場を去っていった。

もう一方のグラドのブラッディブレイクのビームバルカンの連射からひたすら逃げるヒロキのブレイジングウルフSA
「このまともに動けない状態じゃいつまで避け切れるか分からないよ!」
ヒロキが言う様に、ブレイジングウルフSAの右前足は先程ブラッディブレイクのゴジュラスキャノンをまともに食らってアーマーが破壊され、フレームがむき出しの状態になっている。
さらに、フレームにもダメージを受けており、まともに動かなくなっていた。したがって右前足を引きずる感じで走っている。
「そこだ!」
「うわぁ!」
ブラッディブレイクのビームバルカンがブレイジングウルフの後ろ足に当たり、その際にバランスを崩して地面に滑り込む様にして倒れた。
「ま、まずいぞこのままじゃ・・・」
倒れているブレイジングウルフSAに近付くブラッディブレイク。
「ここまでだな・・・」
「折角のところ悪いがそこまでだ!」
ブラッディブレイクとブレイジングウルフSAの前に現れたのは背中に2本のブレードを背負った白い恐竜型ゾイドだった。
「ブリッツレイザー・・・、ちっ、レミュエルか」
その白い恐竜型ゾイドはブリッツレイザーと呼ばれていた。デスレイザーをベースに主装備の2本の剣、ブリッツブレードを装備した接近戦を特化させた機体だ。
「後少しのところを邪魔しやがって」
邪魔を入られた事で機嫌を悪くするグラド。
「邪魔も何も、この戦闘行為は本来の任務では無いだろ」

「・・・頭の固い奴だぜ」

生意気に小声で言うグラド。
「大丈夫かヒロキ!?」
続いてやってきたのがライサーのアグレッシブだった。
「うん、何とかね。だけどブレイジングウルフの方のダメージがちょっと大きいかな・・・」
何とか機体を起こすブレイジングウルフSA
「そうか、でそこにいる赤い凱龍輝がヒロキのブレイジングウルフと戦っていたって訳か」
ブラッディブレイクを見て言うライサー。
「すまないな、ライサー、それにヒロキ君」
グラドに変わってヒロキとライサーに謝罪するレミュエル。
「いえ、気にしないで下さい。僕の方にも責任がありますから」

と笑顔で返すヒロキ。
「全くヒロキらしいぜ」
ヒロキの行為に同感する感じのライサーであった。
「そろそろミレン達のいる場所へと戻る事にしようか」
「そうだな、そういや動けるかヒロキ?」
ブレイジングウルフSAの様子を見て、動けるか確認をするライサー。
「うん、何とか大丈夫」
何とか動ける状態だとライサーに伝えるヒロキ。
「なら大丈夫だな、んじゃ行くぞ」
「うん」
「ほらグラドも行くぞ」
「・・・・・・」
ヒロキ達はいがみ合っているイズキとミレンがいる場所へと向かって行った。

 

* * *

 

その後イズキ達と合流したヒロキ達、そして別れ際の挨拶の時。
「また会える機会があったらよろしくな、レミュエル」
「こちらこそ会える機会があったらよろしく頼むよ、ライサー」
ライサーとレミュエルは固い握手を握った。
「今度こそ私が絶対に倒してあげますわ!覚えておきなさいっ!」
「こっちだってギッタンギッタンにしてやるからなっ!」
「「い〜だ!!」」
こちらは相変わらずいがみ合いを続けるイズキとミレンであった。
「次は絶対負けないよ!」
「フン・・・、それはこっちのセリフだ」

こちらはお互い闘志を燃やしていた。

「ところでお互いの名前をまだ聞いて無かったね」

「俺はグラド、グラド・レイジット」

「僕はヒロキ・バラート、呼ぶ時はヒロキだけでいいよ」

お互いの名前を確認し合う二人。
「グラドか・・・、良いライバルになりそうだね」
「・・・ライバルか、そういったのも悪くはない」
お互いライバルと認識し合うヒロキとグラド、グラドの無表情の顔に少しだけ笑顔が見えた気がした。
「俺達は基地へ戻るとしよう」
「俺達もこの辺で帰るとしますか」
ライサー、レミュエルの声に合わせ、それぞれの帰る場所へと帰る6人。

「グラド、あなたにしては珍しく笑顔ね、何かあったの?」
グラドの表情の変化にミレンが問う。
「・・・あったのかもな」
意味深な答え方をするグラド。

「何よそれ・・・、でもそんなとこがあなたらしいわね」
グラドの返答に多少困惑気味なミレンであった。

「どうしたのイズキ、そんな不機嫌な顔して?」
イズキの不機嫌そうな顔を見て問い掛けるヒロキ。
「ちょっとばかし嫌な事があっただけ」
と不機嫌な口調で答えるイズキ。
「そうなんだ、色々あったんだねぇ」
「まぁ、あんな事があればなぁ・・・」
苦笑いするライサー、イズキの不機嫌な理由をしっているからだ。
「何かライサー事情知ってそうだけど、聞かない方がよさそうだね」
「そうした方が良いと思うぜ、聞いたら半殺しにされかねないからな」

「あたしがそんな事するかー!!」

「あはは・・・」
モニターを通してライサーの言う事を否定するイズキ。ヒロキはイズキの事を考え、不機嫌な理由を聞こうとはしなかった。
(グラド・・・、いつかまた君と戦える時が来るかもしれないね)
ヒロキもグラドと同様に再び戦える事を心待ちにするヒロキであった。

 

#10 完、#11に続く