#11 二人のトレジャーハンター | 著/Ryuka |
「ガンガン削り進んでいくんや!この先にお宝があるらしいで」
「そうだね、何とか頑張って進んでいくよ」
そう話している二人の少年少女が乗るヘビーライモスは、お宝目掛けひたすら岩壁を鼻先のドリルで砕きながら奥へと進んでいた。
「あ、何か光が見えて来たね」
「もしかしたらあの奥にお宝があるかもしれん!」
「それじゃ向ってみるね」
ヘビーライモスは、僅かに光が漏れている箇所にドリルを突き刺す、そして岩が崩れ落ち、ヘビーライモスはその光の中へと入って行った。
「お宝がついに目の前に・・・、ってあれ?」
「何か街みたいだね・・・」
出て来た先にはお宝では無く街の風景があった。実は二人は僅かに漏れていた光をお宝のありかの勘違いしてしまった様だ。
「ねぇサクノちゃん、それ本当に宝の地図なの?」
「あかん、これよく見たらこの周辺の地図だったわ〜、ウチ勘違いしてもうた〜」
普通の地図を宝の地図と勘違いして頭を抱える少女、彼女の名はサクノ=ブレッセル、14歳という若さでトレジャーハンターをしている。気が強く、何故か関西弁で喋るのが特徴。
そしてもう一人、ヘビーライモスを操縦している少年の名はシグ=フレッソ。サクノの同じ歳で、同じくトレジャーハンターである。気弱で、よくサクノに振り回される苦労人でもあるが、本人はその事に悪い気は思っていない。
「なぁシグ、ここ地図で見たら“傭兵の街”ってとこみたいやで」
「そうなんだ、あの“最強の傭兵”って人がいるっていう街の事?」
「そうなんやろ、ってウチに聞かれても知らんがな」
「ゴメン・・・」
落ち込むシグをよそに、サクノはシグにこう言う。
「それじゃ早速街の人に聞き込み開始やー!ほらシグ行くで!」
「う、うん・・・」
シグはサクノの勢いに引っ張られる感じでヘビーライモスを動かした。
* * *
シグとサクノはヘビーライモスに乗りながら街を眺めていた。
「傭兵の街って、結構栄えてる街なんやなぁ〜」
「僕らがいた街と同じ位だね」
「そうやな〜、ウチらが住んどった街も割と栄えてた方やしな」
二人は故郷の街の事を思い出していた。そしてそこからまた少し移動した先でヘビーライモスが立ち止まる。
「何か凄く大きな建物だねサクノちゃん」
シグは目の前の大きな建造物を見てこう言った。
「見る限り闘技場みたいな感じやな、ここじゃあれやし、降りて近くまで行ってみようかシグ」
「うん」
サクノの計らいでヘビーライモスから降り、歩いてその建造物の近くまでやってきた二人。
「うわ〜、間近で見るとますますデカイ建物やな」
「そうだねぇ〜・・・」
するとその建造物の中から歓声らしき声が聞こえた。
「何か人の声が聞こえるなぁ、中で祭りとかやってるんやろうか?中に入って見に行ってみようっと」
サクノは、何の躊躇も無く建物の扉に手を掛け、入ろうとした。
「ちょ、ちょっと待ってよサクノちゃん。いくらなんでもいきなり入るなんて良くないよ」
無断で入ろうとしているサクノを止めようとするシグ、サクノは「何で?」と言った様な顔をした。
「え?何言っとんねんシグ、この貼り紙を見てみい」
サクノが言ってる通り、扉に貼られている貼り紙には、“観戦無料”と書かれていた。
「あ・・・、そうなんだ・・・」
「きっとゾイドバトルに違いない、ウチは見に行くで。シグはここにいたっていいんやけどな」
「そんな酷い事言わないでよ〜、僕も行くよぉ〜」
二人は闘技場の中へと入って行った。
闘技場の中では客席の歓声と共にゾイドバトルが行われていた。
「おー、やってるやってる」
「凄いな〜」
二人もそのゾイドバトルを観戦していた。
「レブラプターが2体に、コマンドウルフLCが一体。それに対し相手はグレートサーベルに、シールドライガーか」
相手チームのゾイドの数を見て、不思議そうな顔で見るサクノ。
「それに3対2って、数的に不利やで、大丈夫なんやろうかあのチーム」
数的に考えれば明らかに2体のチームが不利だ。サクノはそれを見て何で3体にしなかっただろうと思っていた。
「見て、サクノちゃん。あのチーム、2体しかいないのに、3体のチームに全然引けを取ってないよ!」
シグの言う通り、2体のチームが、3体のチームと全く引けを取っていない、むしろ2体のチームの方が押している。
「嘘やろ・・・、まるで機体数とか関係無しやないか・・・」
この試合展開に驚きを隠せないサクノであった。
* * *
同じ頃、試合場ではヒロキとユキエが、対戦相手のレブラプター2体とコマンドウルフLC1体と戦っていた。
「それじゃ行くよ、ユキエちゃん」
「はい、ヒロキくん」
そう言ってシールドライガーとグレートサーベルが走り出した。レブラプターも同様に、2機に向かって走り出し、コマンドウルフLCが後方射撃をする。
「当てさせないよ!」
「当てさせないわ!」
コマンドウルフLCの砲撃をかわす2機、そしてレブラプターが、カウンターサイズを展開させながらこちらへ向かってくる。
「甘いわ!」
グレートサーベルはレブラプターの攻撃をかわし、隙だらけのレブラプターの横っ腹に3連衝撃砲を撃ち込み、レブラプターは、その場で倒れた。
「隙だらけだよ!」
シールドライガーは、レブラプターの攻撃の当たらないギリギリの位置にステップ移動し、すれ違いざまにレブラプターに噛み付き、そして放り投げる。レブラプターは地面に叩き付けられ、停止した。
「あと1体だ!」
シールドライガーがコマンドウルフLCに向かって走り出す。
「反撃はさせないわ」
グレートサーベルが、この前のダークホーン戦と同じ様にミサイルを放って、コマンドウルフLCの手前の地面に着弾させる。
「くっ・・・」
ミサイルの爆発によって怯んだところに、爆風の中からシールドライガーが現れ、コマンドウルフLCに爪を叩き込む。コマンドウルフLCは吹っ飛ばされる様にして倒れ、機能停止した。
『勝負あり!ウィナー、チーム・ワークス!』
「やったね、ユキエちゃん」
「ええ、勝ちましたねヒロキくん」
闘技場の中は観客の大歓声に包まれた。
「やったじゃん、ヒロキ、ユキエ」
「おめでとー、ユキエちゃん、ヒロキくん」
観客席にはイズキ、フェイラに、ローダもいた。
「二人共中々良い戦いぶりになってきたな」
ローダも、ヒロキ、ユキエの戦いぶりを見て褒めている感じだった。
* * *
一方、その試合を見ていたサクノとシグ。
「す、凄いであの2体!どんなパイロットなのか見てみたいわ〜」
「でもそう簡単に会えないと思うよ」
「せやな〜、そこが問題なんやけどな・・・」
と、サクノが悩んでいた時、近くに座っていた男がこう言った。
「流石はユキエさん、強いよなぁ・・・、それに素敵だし」
その男は鼻の下を伸ばして言っているようにも見えた。
「なぁアンタ、何鼻の下伸ばしとんねん」
「ちょ、サクノちゃん!」
サクノは、ジト目でその男に言った。するとその男は、急に話し掛けられた事で驚いていた。
「なっ!?何見てんだよ!ていうかアンタら誰だ!?」
かなり慌てた様子で、サクノ達の事を聞く男。
「ウチはサクノ。こっちはシグ」
「どうも・・・」
自分の名前を堂々と紹介するサクノと、苦笑いをしているシグ。
「そういうアンタこそ誰なんや?」
今度はサクノがその男の事を聞いた。
「あぁ、俺はリオン、傭兵としてこの街に住んでる者さ」
その男の正体はリオンだった。彼も傭兵である。
「ところで何で鼻の下伸ばしてたんや?」
いきなり核心をつくサクノ。
「そ、そんな訳無いだろっ!」
と、慌てた様子で否定するリオン。
「本当か〜?まぁそんな事はどうでもええけどな、ウチには何も関係あらへんし」
「じゃあ聞くなよ!」
聞いてきた割に然程気にしないサクノに突っ込むリオン。
「あ、そうや、アンタに聞きたい事があるねん」
「また何だよ・・・」
どうせロクな事聞かれないだろうと思っているリオン、だがサクノはリオンの思っていたのとは違う質問だった。
「あのさぁ、さっきのゾイドバトルに出てたシールドライガーとグレートサーベルのチームについて何か知らない?」
「まぁ、知らないかって言われたら、知らなくも無いんだがな」
サクノの質問にこう答えるリオン、何故なら彼はヒロキとユキエの事は知っていたからである。
「ホンマか!?それならウチらをあの人達がおるとこまでしてくれへんか?」
リオンの反応に喜び、早速ヒロキ達がいる場所へと案内してほしいと言い出したサクノ。
「あのなぁ・・・、いきなり案内してくれって言われて素直に案内する奴がいるかよ・・・」
当たり前の事に半ば呆れ気味になるリオン。
「そ、そうだよ、そんな都合良く物事上手くは運ばないよ」
シグもリオンと同じ考えだった。
(くそぉ・・・、こうなったら“あの手”でいくしかない)
「どうしても一目見たいんや、だから案内してくれへん?」
目をウルウルさせ、今にも泣きそうな感じで言うサクノ。
(うわぁ・・・、強行作戦にでたよサクノちゃん・・・)
シグはサクノの行動にただただ見ているだけであった。
「そんな顔で言うなよ・・・、仕方無いなぁ、分かったから案内してやるよ(大体いるとこは把握出来てるんだけどな)」
「ありがと、リオンはん」
これにはリオンも認めざるおえなかったのかもしれない。そして喜びながら心の中でガッツポーズをするサクノ、見事なまでの作戦勝ちであった。
「それじゃ二人共、俺のあとについてきな」
「は〜い」
「あ、待ってよサクノちゃん〜」
こうしてヒロキ達に会う為に、リオンのあとについて行くサクノとシグであった。
リオンの黒いカノンフォートを先頭に、その後ろをに二人が乗るヘビーライモスが続く。
「ヘビーライモスとは結構いいゾイドに乗ってるんだな」
「そ、そうですか。何か照れるなぁ・・・」
自分の乗っているゾイドを褒められ、思わず照れるシグ。
「シグ、自分のゾイド褒められた位で何照れてんねん」
「だって、自分の乗ってるゾイドを褒められたんだよ」
嬉しそうに言うシグ、サクノにはいまいちその気持ちが分からなかった。
「ところでサクノって、自分のゾイドとか無いのか?」
サクノに質問するリオン、だがサクノは、その質問を聞いて戸惑いの顔を見せ始めた。
「え、え〜っと・・・」
「実はサクノちゃ・・・」
「いや〜、実はウチ、自分のゾイドをまだ持ってないんや、だからシグのヘビーライモスに乗せて貰ってるって訳なんや」
シグは何かを言おうとしたが、サクノが制止する形でシグの話に割り込んだ。
「そうか、いいゾイドが見つかるといいな」
「そ、そうやな、あははは・・・」
「サクノちゃん・・・」
どうやらサクノには知られたくない秘密がある様だ。ただシグだけはその秘密を知っているのだ。
「よし、着いたぜ。多分いるとは思うんだが」
着いた場所は、研究所と整備工場が一緒になった様な施設だった。因みにここは、Dr.クロノスの研究所兼整備工場である。
「ホンマありがとな、リオンはん。折角だからリオンはんも行こうや」
「俺は別に・・・」
「何もここまで来て遠慮する事は無いやろ、ほな一緒に行くでリオンはん」
「仕方ねぇな・・・」
サクノに言われるがままについて行くリオン、その様子を見ていたシグは「ホント、サクノちゃんって強引だよなぁ・・・」と、小声で言った。
「シグ、ウチに何か言ったか?」
「もしかして聞こえてたの!?」と思い、ギクッっとするシグ。
「な、何でも無いよ・・・」
「そう」
リオンとサクノ、シグは、その施設に入って行った。
* * *
その頃、Dr.クロノスの研究所にいるヒロキ達はというと・・・。
「やったなヒロキ、カッコよかったよ」
笑顔でヒロキに言うイズキ。
「うん、これもローダさんの特訓の成果だよ」
ローダの特訓のお陰と、ローダに感謝しているヒロキ。
「そうだな、ヒロキも出会った時と比べて、ゾイド乗りとしての腕も成長してきてるしな」
「そんな、ローダさんと比べたら僕なんてまだまだですよ」
と、照れながら言うヒロキ。
「ヒロキくんもそうだけど、ユキエちゃんも大活躍だったよね」
嬉しそうに言っているのはフェイラだった。
「確かにユキエもいい活躍してたよな」
フェイラに賛同する様に言うイズキ。
「いえ、私もヒロキくんと同じく、ローダさんの特訓があったからですよ」
ヒロキと同じく、ローダに感謝している様子のユキエ。
「ユキエも大分ゾイドに慣れてきただろ」
「はい」
笑顔で返事をするユキエ。
「そういえばヒロキ君、今日はブレイジングウルフに乗って無かったが、何かあったのかい?」
ヒロキの乗っていたゾイドの事を聞くDr.クロノス。実はヒロキはブレイジングウルフSAでは無く、シールドライガーに乗って来ていたのだ。
「実は先日、依頼先でブレイジングウルフを傷付けてしまって、今は修理中なんです」
その訳は、先日依頼先でグラドと戦闘した際に、右前足のアーマーとフレームを損傷した為、現在修理中で、代わりとしてシールドライガーに乗って来たのである。当然ながらそのシールドライガーは、Zi-worksCorporationの物である。
「代理の機体とはいえ、あそこまで乗りこなせているのも大したものだ」
「そうなんですか?」
Dr.クロノスに質問するヒロキ。
「大抵は乗り慣れてないゾイドに乗ると、乗り慣れているゾイド程の力を発揮出来ない事が多いのだよ」
「という事は、僕は凄いって事なんですか?」
「まぁ、そういうところだな」
「ありがとうございます」
Dr.クロノスにおじぎをするヒロキ。Dr.クロノスは笑顔で返す。
「でも即席でヒロキくんとユキエちゃんがチームを組んでも、息がぴったりだったよね」
「本当に即席で組んだチームなの?」
「ボクもそこが気になってたところなんだ」
即席で組んだヒロキ・ユキエチームの息のぴったりさに疑問を覚えるイズキとフェイラ。
「えっと、僕に言われても・・・」
困ったヒロキは顔をユキエの方へと向ける。
「私に聞かれても・・・困るなぁ・・・」
困ったユキエも顔をヒロキの方へと向ける。そんな時、2人に代わってローダが答えた。
「多分俺の思うに、二人共自己主張があまり強くないタイプだから、協調しやすいってのもあるかもしれねぇな」
ローダの言う様に、ヒロキとユキエも、自己主張があまり強くは無く、どちらかと言うと控え目である。
「でもそう考えたらどちらにとっても気が楽かもしれないな」
「揉め事とかも少なそうだしね」
抱いていた疑問の結論を付けたイズキとフェイラであった。
そんな時入口の方から声がしてきた。
「おーいDr.クロノスー、ローダ達いるかー?」
声の主はリオンだった。大声でDr.クロノスを呼ぶリオン。
「ええ、来てますよー」
Dr.クロノスの声で返事が返ってきた。返事の内容からどうやらいる様だ。
「良かったな、丁度いるみたいだぜ、二人共」
「ホンマか!?もうすぐ会えるんやな、あのシールドライガーとグレートサーベルのパイロットに」
もうすぐヒロキ達に会える事の嬉しさにはしゃぐサクノ。
「僕も・・・、楽しみだなぁ」
サクノの様にはしゃいではいないが、嬉しそうな表情をするシグ。
「どうやらその様子だと待ち切れない様子だな、じゃ行くか」
「勿論やで」
「うん・・・」
リオン達は、ヒロキ達のいる場所へと向かって歩き出した。
「え?誰が来たって?」
Dr.クロノスに聞くローダ。
「リオン君が来たんですよ」
「リオン?何でアイツが?俺呼んだ記憶ねぇけどな」
と頭を掻きながら話すローダ、そこに、
「おー、みんな集まってるみたいだな」
「あ、リオンさん」
リオンと、二人の少年少女が一緒にいた。
「何だ、また懲りずに俺に挑みに来たのか?」
また勝負しに来たのだと思って、呆れた口調で言うローダ。
「違ぇよ、この子達が今日ゾイドバトルに出た奴に会いたいってさ」
リオンは、サクノとシグに指を指す。
「ところで誰なのこの子達?」
イズキがリオンに質問する。
「まさか誘拐してきたのか?」
と、冗談混じりで言うローダ。
「んな訳あるかっ!」
「実はウチらこの男の人に誘拐されて、無理矢理ここに連れて来られたんや・・・」
「うぉい!」
涙目になってローダ達に嘆くサクノ、勿論これは嘘泣きで、本当に泣いている訳では無い。
「そうだったのか・・・」
「これは誤解だっ!」
本気で信じようとしているイズキに、必死で否定するリオン。
「リオンさんの言う通り、僕達は今日のゾイドバトルに出てた二人組のチームの人達に会いに来たんです」
ここにリオンと一緒に来た理由をローダ達に話すシグ。
「何やシグ、つまらん奴やなぁ」
「サクノちゃん、いくら冗談でも、あれは良くないと思うよ・・・」
「何を言うとるねん、あそこで一発おもろい事かますのが良いんやないか」
全く反省する気無いサクノ、シグは思わず溜息をつく。
「何だ、そうだったんだ。そういうの早く言ってよね」
「さっきから言ってるじゃねぇか!」
「まぁまぁ、リオン君落ち着いて」
と、リオンをなだめるDr.クロノス。
「話は大体分かった、もう少しでヒロキ君とユキエ君が来ると思うよ。それで君達は誰なんだい?」
「あ、そういえば」
Dr.クロノスは、サクノのシグの方に顔を向ける。イズキも同様に顔を向ける。
「そういや自己紹介がまだやったな、ウチはサクノ、サクノ=ブレッセルって言うんや」
「僕はシグ=フレッソ、皆さん宜しくお願いします」
「あたしはイズキ=ラピレス」
「私はクロノス=リュンヘルト、Dr.クロノスと呼んでくれ」
「俺はローダ=ガレス、宜しくなサクノ、リオン」
皆それぞれ自己紹介をする、そんな時奥から人がやって来た。
「ゴメーン、ちょっと色々あって遅れちゃった。で、この子達は?」
フェイラは来るなりサクノとシグの方を見て、イズキに誰なのかを聞いた。
「女の子の方はサクノ、男の子の方はシグって言うんだ」
「そっかぁ、ボクはフェイラ=ウィリス。サクノちゃん、シグくん、よろしくね」
笑顔でサクノとシグに言うフェイラ。
「うん、よろしくねフェイラさん」
「あぁ、よろしくなぁ。しっかし、女の人なのに一人称が“ボク”って、明らかに萌えを狙ってる気がしてならんのや」
「言っとくが、あれは元々なんだ。最初はあたしもビックリしたけどね」
フェイラの事を補足してサクノとシグに説明するイズキ。
「そうなんですか」
「すいません、遅れてしまいました」
「遅れてしまってすいません、皆さん」
「ヒロキ、それにユキエ」
フェイラより少し遅れて来たのは、ヒロキとユキエだった。
「今来たこの二人が、今日のゾイドバトルに出たヒロキ=バラートと、ユキエ=アルバーレンだ」と、ローダが説明する。
「ホンマか!?遂に出会えたんやな」
「ホントだね」
ゾイドバトルで、勝利を収めた二人に会えて、嬉しさで興奮する二人。
「あら、リオンさんも一緒に来てたんですね」
「あっ、は、はいユキエさん」
顔を赤くするリオン。サクノはそれを見逃してなかった。
「ほっほう〜、さてはリオンはん、もしかしてユキエさんの事が・・・」
「ば、バカ言うな、ユキエさんはゾイド乗りの腕も良いし、何より・・・綺麗だし」
顔を赤くしながら、照れ隠しに言うリオン。
「ありがとうリオンさん」
「そ、そうですか・・・」
笑顔のユキエに、顔が紅潮しっぱなしのリオンだった。
「それにしても、こんな凄い人達に会えるなんて光栄や、ヒロキはん、ユキエさん、ウチと握手してくれへんか?」
「ぼ、僕も握手して欲しいな」
ヒロキとユキエに握手を要求するサクノとシグ。
「もちろんOKだよ」
「お断りする理由も無いですもの」
ヒロキとユキエはそれを承諾し、サクノとシグにそれぞれ握手をする。
「ウチ・・・、ホンマに、ホンマに嬉しいで、ありがとなヒロキはん、ユキエさん」
「僕もお礼を言わせて下さい。本当にありがとうございます」
握手をしてもらった事で、嬉しさで一杯のサクノのシグ。ヒロキとユキエも、二人の笑顔を見て、顔をにこやかになる。
「そういや僕も、ローダさんに特訓受けて貰えた時は、あの子達と同じ様に喜んでいたなぁ」
「私もローダさんについて行って良いって言われた時、あの子達と同じ表情をしてましたわ」
「僕達、あの子達と似てるとこあるよね」
「そうね、確かに私達と似ている所はあるわね」
サクノ達を見て、ローダと出会った時の事を思い出していたヒロキとユキエであった。
「そうだ君達、実はそこにいるローダさんは、“最強の傭兵”と呼ばれる程の有名人なんだよ」
「それに私達よりもとっても強いゾイド乗りなのよ」
サクノとシグに、ローダの事を説明するヒロキとユキエ。
「ホンマかいな!?どんだけここに有名人がおるんや!」
驚きを隠せないサクノ。
「まぁ、二人の言ってる様に、確かに俺は“最強の傭兵”と周りから言われている」
「ローダさんって、ホントにすごい人なんですね」
ローダを尊敬する感じの口調で言うシグ。
「まぁな」
と、すると突然サクノがこんな事を言い出した。
「シグ、そろそろ行くで」
「え、まだ来たばっかりじゃ〜ん」
「何を言うとんねん、いつまでもここにいてはあかん、お宝がウチらを待っているんやで」
「そうだけどさ〜・・・」
「ほらグズグズしとらんと、さっさと行くでシグ。それじゃ皆さん、おおきにな」
「皆さん、それでは〜・・・」
シグの手を引っ張ってその場をから走り去って行くサクノ。これにはヒロキ達もきょとんとしていた。
「お宝が待ってるって事は、彼女達はトレジャーハンターなんだろうね」
と、Dr.クロノスは言った。
「トレジャーハンターって、あの歳でか!?」
「少なくともボク達より年下に見えたけど」
これに驚くリオンとフェイラ、二人が驚くのは無理も無い、サクノとシグは、共にまだ14歳という若さだったのだ。
「まぁいいじゃねぇか、何やるにしても歳は関係ないしな」
「そうだよねローダさん、ところであの子達誰だったの?」
「私もそう思ってたんだけど・・・」
「「「「「あ!」」」」」
実はヒロキとユキエは、サクノとシグの事を最後まで知らなかった様だ。その事にローダ達はすっかり忘れていたのだ。
後にイズキとフェイラによって、ヒロキとユキエはサクノとシグの事を教えて貰った。
* * *
Dr.クロノスの研究所を飛び出して、もう誰もいない闘技場の前でヘビーライモスを止め、そのヘビーライモスの前にサクノとシグがいた。
「どうして急に飛び出して行っちゃうのさ、僕もっとはなしたかったのに・・・」
訴えかける様にしてサクノに言うシグ。
「ウチらはトレジャーハンターなんやで、お宝を追わないでどうするっちゅ〜ねん」
「確かにそうだけど、折角いい人達に会えたのに、僕、この街から出るのは寂しいよ」
涙を浮かべながら言うシグ、だがサクノは意外な一言を口にする。
「何言うとんのや、ウチらこの街に住むで」
「え・・・?」
突然の事に理解出来ないシグ。だがサクノは話を続ける。
「だから、この街に住むんやって言うとるやろ」
「でも、それじゃあトレジャーハンター辞めちゃうの?」
「んなアホな事言うな、トレジャーハンターは続けるに決まってるやないか、この街を拠点として活動していくんや」
「でも家とかどうするの?」
この街を拠点にすると言っても、家とかどうするのかを心配しているシグ。
「それなら心配あらへん、どうもこの街の貸家は、そこそこの大きさの割に家賃が安いみたいやし、住む分には問題無いかと思ってな、ウチゾイドの中で寝泊まりするのどうにも嫌やったから・・・」
「それじゃトレジャーハンターやりながら、またヒロキさん達と会えるの!?」
「そういうこっちゃ、ウチもヒロキはん達とはまた会いたいしなぁ」
「や、やったぁー!」
大喜びするシグを横目に、にっこりと笑うサクノ。
「そうと決まれば早速家探しに行くでシグ、ウチゾイド操縦出来んから頼むで」
「うん、分かってるよ」
そう言ってサクノとシグは、ヘビーライモスに乗り込んだ。
#11 完、#12へ続く