#12 新たなる仲間!? | 著/Ryuka |
傭兵の街でユキエちゃんとコンビを組んで受けたゾイドバトルに見事勝利し、大活躍をした翌日、僕はZi-worksCorporationの格納庫にて、未だ修理中のブレイジングウルフSAを見ていた。
「まだこの調子じゃ修理は終わりそうになさそうだな・・・」
この前のブラッディブレイクの攻撃を受けた箇所が、思った以上に激しく損傷しており、修理に時間が掛ってるとの事、ゴメンねブレイジングウルフ、僕が未熟なばかりで・・・
そういえば今日社長が言ってたけど、新しくエースパイロットがやってくるそうだ。
「新しくやってくる人どんな人かな〜」
そう言って、僕はどんな人が来るのか楽しみで仕方が無かった。
* * *
社長室へと戻った僕は、社長や、イズキとライサーの他に、新しく来たエースパイロットと初めて顔を合わせる。
「やっと戻ってきたね、ヒロキ」
「ブレイジングウルフの様子はどうだった?」
イズキとライサーが僕に話し掛けてくる。ライサーは、ブレイジングウルフの様子を聞いてきた。
「まだ修理が終わるには時間が掛かるみたい」
「そうか、気長に待つしかなさそうだな」
「うん・・・」
僕の言った事に頷く様に答えるライサー。確かに僕も直るまで気長に待つしか無いと考えていた。すると社長が僕に話し掛けて来た。
「そういえばまだヒロキ君には紹介していなかったね、今日から新しいエースパイロットとしてZi-worksCorporationに所属する事になったアルト=ソネード君だ」
社長の隣にいる女の子が、新しく来たエースパイロット、アルト=ソネード。見た感じ僕と同じ歳くらいと思える。
「アルト君、あの子は先程のイズキとライサーと同じくエースパイロットのヒロキ=バラート君だ。折角だから挨拶してあげなさい」
「あ、あの私・・・、アルト=ソネードと言います・・・」
「僕はヒロキ=バラート、よろしくねアルトちゃん」
「う、うん・・・、よろしくねヒロキさん・・・」
僕の目の前にいるアルトちゃんは、モジモジしながら僕に話していた。もしかしてアルトちゃんは人と話すのが苦手なんだろうか・・・。
「ヒロキ、実はアルトは極度の人見知りで、人と話すのが苦手なんだって」
と、イズキが補足をしてくれた。やっぱり僕の思った通りだった。何だか見てるだけでも人と話すのが苦手な感じがしてたもの、僕達で何とかしてあげたいなって思い始めた。
「もしかしたらヒロキも同じ事思ってるのかもしれないけど、あたしもアルトに何とかしてあげたいなって思ってるんだ。何か放っておけない気がしてさ」
「俺もイズキと同じ事思ってたとこだ、同じエースパイロットとして放っておく訳にもいかないしな」
イズキもライサーも、僕と同じ事思ってたんだ。やっぱり暗い性格で、人見知りのアルトちゃんは、放ってはおけないよね、ライサーの言う通り、同じエースパイロットっていう仲間だから。
「僕も二人と同じ事思ってたんだ」
「やっぱりな、ヒロキが何もしない訳ないからな」
まるで分かってたかの様に言うライサー、何か複雑な気分にさせられるな。
「それじゃ三人共、苦労するかもしれないが、アルト君を宜しく頼むよ」
「「「はいっ!」」」
僕達は、アルトちゃんを連れて社長室を後にした。
* * *
社長室を後にしたヒロキ、イズキ、ライサーは、新しくやって来たアルトにどう接するか話し合っていた。
「とりあえずアルトちゃんを僕達の休息所に連れて行ってあげたけど、これでよかったの?」
「あぁ、本人を目の前で言うのはあれだからな」
「さぁ、早速始めましょ」
こうして話し合いが本格的に始まった。
「だけどさ、アルトとどう接したらいいんだろ?」
と、悩み顔で言うイズキ。
「そうだよな〜、何かまだ俺達に心開いてないって感じだったしな」
同じく悩んだ表情で言うライサー。
「確かに、まだあたし達の事を怖がってる様にも見えたし・・・」
「何とかしてその恐怖心を払っておきたいしな」
「ねぇ、みんな」
「「え、何?」」
今まで二人の話をそばで聞いていたヒロキが、そっと口を開いた。
「僕考えてみたんだけど、みんなでアルトちゃんの所に行くよりも、この中の一人がアルトちゃんの所に行って話すってのはどうかな?それならアルトちゃんの気持ちも和らぐと思うから・・・」
ヒロキの提案に、イズキとライサーは反対する様子も無く、むしろ共感している感じだった。
「そうね、その方がアルトには良いかもしれないね。ナイスアイディアだよヒロキ」
ヒロキに向かって笑顔で答えるイズキ。
「ヒロキの言う通りだな、アルトの様な性格だと、全員で行ったところで、かえって怯えたりとかして逆効果になるしな」
ライサーが言う様に、アルトの様な内向的で、かつ極度の人見知りな性格を持つ人だと、大勢で話し掛けても、心を開くどころか、逆に怖がってしまい、より心を閉ざしてしまう可能性があるからだ。そこでヒロキは、大勢で行くよりも、一人でアルトと接して少しずつ心を開かせていこうと考えたのだ。
「で、誰がアルトちゃんの所へ行く?」
と、イズキとライサーに問い掛けるヒロキ。だが、2人は何も言わず微笑みながらヒロキを見ていた。
「ど、どうしたの?」
2人の態度にオロオロとするヒロキ。何か悪い事でも言ったのかと思っていた。だが2人はヒロキの思っていたのとは違った反応を見せた。
「決まってるじゃない」
「へ?」
「こういう役目はお前が適任だろ」
イズキとライサーはヒロキの優しい性格をよく知っている。だからこそこういった役は彼にピッタリであったからだ。
「でもどうして僕なの?」
「その、何て言うか・・・、ヒロキって優しいじゃん。だからあたしやライサーよりもアルトには良いじゃないかって思ってさ」
少し照れた様子で答えるイズキ。
「それにイズキだと逆に怖がられるかもしれないしな」
「もー、何よそれ」
冗談混じりで言うライサーに、顔を膨らせて言うイズキ。
「あはは・・・、みんなありがとう、それじゃ行ってくるね」
「おー」
「任せたぜ」
ヒロキはアルトのいる休息所へと向かった。
* * *
その頃私は、ヒロキさんに指示された通り、休息所の中に一人でいた。
「ヒロキさん達・・・、今頃何してるのかしら・・・」
ヒロキさん達が何しているのかは気になるけど、言われた事はちゃんと守らなきゃいけないよね。
「でも・・・、ここに来た本当の理由はとても言えないわ・・・」
そう、私はただ単にZi-worksCorporationにやって来た訳じゃない、おじい様の命令で来ているって事を・・・
『良いかアルト、敵の事情を知る為にもZi-worksCorporationにエースパイロットとして潜入してもらう、わしの命令だ、嫌だとは言わせんぞ』
「はい・・・、おじい様」
私はおじい様に逆らう事が出来なかった、いや逆らえないと言った方がいいかもしれない。
「でも、ヒロキさん達を見ているとそんな事出来ないわ・・・」
私は怖かった、もしこの事がヒロキさん達にバレたら絶対に嫌われる、それだけは避けたい・・・。そう考えただけでも胸が痛む。
「私は・・・どうしたら・・・」
そんな時だった、休息所の扉が急に開いた。私は急な事で驚いたけど、扉の先にはヒロキさんが立っていて、少しホッとした。
「ゴメン、少し待たせちゃったね」
「いいえ、そんな事ないわ」
私は特別悪い気はしなかった、だって私の為に気を遣ってくれてるから・・・。
「ところでアルトちゃん、好きな物とかって何かな?」
「え?」
思っていなかった事を聞いてきたヒロキさんに私は少し驚いた。てっきりどうしてここに来たとか聞いてくると思ってた。
「えっと・・・、植物を見たり育てたりする事が好きです・・・」
「そうなんだ、僕も植物を見たり育てたりするの好きなんだ。アルトちゃんと一緒だね」
にっこりと笑顔で言うヒロキさん、その姿を見てると羨ましいなぁって気持ちになる。私の
「ええ、一緒だね・・・」
私と同じ様な趣味を持つ人が目の前にいる、ヒロキさんとは仲良くやれそうな気がする、勿論イズキさんやライサーさんとも・・・。私は勇気を振り絞って、思っていた事をヒロキさんに言った。
「あのヒロキさん、こういうの聞くのはどうかと思ったのですが・・・」
「ん、何?」
ヒロキさんは「どうしたの?」という感じで私に訪ねて来る。
「その・・・、何で私がZi-worksCorporationにエースパイロットとして来たのとか聞かないのですか?」
私は何を言われても良い様に覚悟は出来ている・・・つもりだった。
「う〜ん、上手くは言えないけど、そういう事って人それぞれの事情があるから、あんまり聞かない方が良いかなって」
「どうしてなの?」
私にはヒロキさんの言っている事にはいまいち分からなかった。普通なら来た理由とか真っ先に聞くはずなのに。
「僕やイズキ、ライサーはそういった事は気にしない方だし、それに僕達はアルトちゃんと仲良くなりたい、ただそれだけなんだ」
「仲良く・・・?私と・・・?」
「うん、アルトちゃんと」
無垢な笑顔で答えるヒロキさん、まだここに来たばかりの私を疑うような様子すら見せなかった。
「・・・・・」
「ど、どうしたの急に泣き出しちゃって!?」
「・・・ありがとう、今までこんな風に仲良く接してくれた人いなかったらから、嬉しくて・・・」
そう、今まで私には友達と呼べる人はいなかった。私が人見知りなだけで無く、周りにはいつも大人の人しかいなかった、だから私はいつも一人ぼっち。だけどヒロキさん達はそんな私を温かく迎えてくれた。嬉しさのあまり涙が止まらなかった。本当に嬉しくて、嬉しくて・・・
「そっか、ずっと一人で寂しかったんだ、分かるよその気持ち、僕もこの街に来るまではあまり友達がいなかったから・・・」
そうだったんだ、私は泣きながらだけど、ヒロキさんの話をしっかりと聞いていた。彼も私と同じ様な境遇を持っていたんだ、でも彼は私とは違って明るく振る舞っている。どうしたらそうなれるのだろう・・・。そうして私は暫く泣いた後、泣き止んで服の袖で涙を拭った。
「それじゃ思いっきり泣いてスッキリしたと思うから、イズキ達がいる場所へ行こうか」
「うん、そうしましょう」
私はヒロキさんに手を取ってもらい立ち上がる。
「え〜とアルトちゃん、これから僕の事ヒロキでいいよ。その方が慣れてるから、あとイズキも同じ様にイズキでいいよ、その方がイズキ喜ぶから」
「で、でも・・・、じゃあヒロキくんでいいかしら?私、人を呼び捨てで呼ぶのは何か失礼な感じがして・・・」
まだ会って間もない人を呼び捨てで呼ぶのは何か気が引けた、というより失礼な気がした。それに人を呼び捨てで呼ぶのって、私らしくないというか・・・
「そんな事無いよ、でもアルトちゃんが呼びやすいならそう呼んでもいいよ。僕はそんな事で怒ったりとかしないから」
「よかった・・・、それじゃイズキさんはイズキちゃんで良いと思うかしら?」
「うん、多分良いと思うよ、じゃあ行こうか」
「はいっ」
私とヒロキくんは、イズキちゃんとライサーさんがいる場所へと向かって行った。
「遅いな〜、ヒロキ・・・」
「何だ、そんなにヒロキの事が心配か?」
「うるさいなぁ、別にそういう訳じゃないし」
「嘘こけ、顔真っ赤じゃねぇか」
「う・・・」
ライサーの言う通り、イズキの顔は赤く染まっていた。これにはイズキも反論出来なかった。
「本当はヒロキの事が心配でたまらないんだろ」
「ら、ライサーに何が分かるって言うんだよ!」
「お前さ、好きなら好きって、正直に言えばいいじゃん、ヒロキなら分かってくれるって」
ライサーは、持っていた飲み物を軽く左右に振りながらイズキに言った。
「それは・・・、あたしには無理・・・かな」
「何で?」
ライサーは持っていた飲み物をテーブルに置いて、イズキにその理由を問い掛ける。
「だって、それって何かあたしらしくないし、恥ずかしいし・・・」
ライサーはイズキの一言を聞いて呆れた顔をし、イズキにこう言った。
「恥ずかしいはともかく、らしくないって・・・、お前バカじゃねぇの」
それを聞いて余計顔が紅潮するイズキ。
「ば、バカって言うなぁー!!」
顔を赤くしながら大声で叫ぶイズキ。
「お、ヒロキ達戻って来たようだな」
「って少しはあたしの話聞けよ」
ヒロキがアルトを連れて、イズキ達の元へと戻ってきた。
「その調子だと上手くいったみたいだな」
「うん、何とかね。ところでさっきイズキの叫び声がしたけど・・・」
「ううん、何でもないの」
「そう、でも何でも無いのに叫ぶのはどうかと思うよ」
「そ、そうだよね、あはは・・・」
冷や汗をかきながらヒロキと話すイズキ。ある意味で図星であるからだ。
「確かに意味もなく叫ぶのは俺もどうかと思うぜ」
ヒロキに便乗するかの様に、からかいの意味を込めて言うライサー。
「お前が言うなっ!」
「うふふ、みんなとても賑やかなんですね」
「うん、いつもこんな調子」
微笑みながら言うヒロキ。
「お、アルトいたのか」
「はい」
ようやくアルトの存在に気づいたイズキ。
「それじゃ今日からあたし達の仲間だ、改めてよろしくなアルト」
「ええ、こちらこそよろしくね、イズキちゃん」
「い、イズキちゃんって!?」
「僕がそう言ったら良いじゃないかって薦めたんだ」
突然の事に驚くイズキに、ヒロキが穏やかに説明を加える。
「そ、そうか、ならそう呼んでも別に構わないぞ」
と、顔を赤くしながら言うイズキ。その様子にヒロキは少し笑っていた。
「ありがとう、イズキちゃん」
「よーし、明日から一緒に仕事頑張ろうな、アルト」
「はいっ」
イズキの掛け声に笑顔で答えるアルト。
「これまた一段と賑やかになりそうだ」
ライサーは手に持っていた飲み物を飲み干した。
* * *
そしてその夜、自宅へと戻ったアルトはとある人物と電話していた。
『どうやら無事に潜入出来た様じゃな、流石はわしの孫娘じゃ』
「・・・・・」
『それではわしが命令を伝え次第その通りに行動してもらう、無論、逆らう事は許されないがな』
「・・・はい」
そう言って電話を切るアルト。
「私は・・・、これから一体どうすれば良いの・・・」
アルトは自分の身に起きている葛藤に悩んでいた。
「おじい様の命令にも逆らえないし・・・、かといってヒロキくん達を裏切りたくはない・・・、私は・・・」
そう言って、一人寂しげに泣いているアルトであった。
#12 完、#13へ続く