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#14 紅の惨劇・前編 | 著/Ryuka |
ここはガイロス帝国第14部隊が駐在する基地。もうすぐ夜が明けようしている頃、基地内の格納庫にて。
「格納庫の様子は?」
帝国兵士が、格納庫の見張り番の帝国兵士に格納庫の状況を確認する。
「特に異常ありません」
「そうか、では引き続き見張りを続けてくれ」
「了解!」
格納庫の見張り番に聞いてきた兵士が去って行く。見張り番はまたいつも通り見張りを続ける。しかし、少し経った後、何やら格納庫の中で物音が聞こえてくる、それも大きな音でだった。
「何事だ?」
格納庫内の不自然な物音に不審に思った兵士が格納庫を覗いてみると、そこには・・・
「ば、バカなっ!?これは一体・・・」
格納庫の大きな扉が開いており、格納庫に配備されていたモルガキャノリー、セイバータイガー、レッドホーン、レブラプター、ヘルキャットといった部隊のゾイド達が次々と格納庫から外へ出て行く。
「た、大変だ!何者かに格納庫の扉が開けられてた上、部隊の全ゾイドが独りでに格納庫を出て行ったんだ!」
兵士は無線を使って、部隊の兵士達にこの事を伝えた。
そして瞬く間に警報が基地内へと響き渡ったが、既に時遅く、部隊のゾイド達は防護壁を破壊して基地の外へと出て行った後だった。
「隊長!このままでは周辺地域に被害が出てしまいますので、周辺地域に対して警報を出しましょう!それと、帝国地区本部とヘリック共和国の方にも報告しましょう!」
「そうだな!兵士一同早急に準備を行ってくれ!」
隊長の指示の元、周辺地域に警報を発令し、帝国地区本部とヘリック共和国地区本部への連絡が慌ただしく行われていた。
その頃、基地の上空にて、頭部にスコープが付いているナイトワイズが基地の様子を見ていた。
「カッカッカッカッ、ここから全ての混乱が始まりを告げるのじゃ!」
不気味な高笑いをする謎の怪しい老人、彼こそがこの騒動の黒幕であったのだ。
* * *
ガイロス帝国のゾイドが暴走した頃、ユートシティにゾイドの集団が向かっていた。
「この先にZi-worksCorporationがあるユートシティがあるんだな」
「あぁ、あのじいさんが言うにはそうらしい」
集団の中の一人が、この集団のリーダーと思われる男に話し掛ける。
「そのZi-worksCorporationというのは、じいさんにとって厄介な物だそうで、俺達にそれを破壊する様に命令を受けた」
「しかし何故あのじいさんは俺達傭兵にこんな事頼んだんだろうな」
「あのじいさんの考えてる事は、俺達が知る必要は無い。傭兵は引き受けた命令をこなしていくだけだ、さぁ行くぞ!」
「了解!」
赤いバンブリアンを筆頭に、コマンドウルフ、モルガキャノリー、ヘルディガンナー、セイバータイガー、ステルスバイパー、ガイサックが混在した100機近い集団の正体は、敵側の組織に味方する傭兵達であった。赤いバンブリアンに乗った男がリーダー格の様である。
傭兵達は、ある老人から受けた命令に従い、ユートシティ(Zi-worksCorporation)を襲撃する為に向かっていたのだ。
一方、傭兵達が襲撃する事を知らないZi-worksCorporationでは、ヒロキ達エースパイロットとゴルザがガイロス帝国のゾイド暴走騒動の事を話していた。
「早朝に起きたガイロス帝国第14部隊に所属する全ゾイドが突然無人のまま動き出し、そのまま基地から逃走した模様だと今朝のニュースを見て思ったんだが、誤作動とかでは無い気がするんだ」
ライサーが早朝に起きた出来事を報道していたニュースの事を言っていた。
「ふむ、となると何者かが部隊のゾイドに何かしらの細工を施したと考えられるな」
「ゴルザ社長もその事は知っておられましたか」
「今朝、ヘリック共和国の方から連絡があっての」
ゴルザもまた、その事をヘリック共和国からの連絡によって知っていた。
「もしそれがこの街に襲ってきたりしたら大変ですね」
暴走したゾイドがユートシティを襲撃する危険性があると考えるアルト。
「確かにそうだけど、縁起でも無い事言うなよな~」
「あ、ゴメンなさい・・・」
そう言ってアルトに突っ込むイズキ。
「イズキの言う通り、そういうのは起きて欲しくないものだな」
イズキに同情する感じで言うライサー。だが、起きる可能性もある事も彼は予想していた。
「ともかく、暴走ゾイドが襲撃した際に備え、ライサー君は、パイロット全員にいつでも戦闘準備をしておく様にと伝えてくれ」
「了解!」
ライサーは、社長室を後にし、パイロット達が集まってる場所へと向かう。
「それにしても、ヒロキは来てからずっと窓の向こうを見てるけどどうしたんだろ?」
「言われてみればそうよね」
イズキの言う様に、ヒロキはじっと窓の向こうを見続けていた。見ていたその表情は、重たい感じが漂っていた。イズキは勇気を振り絞って、ヒロキに話し掛けてみた。
「ねぇヒロキ、さっきからボーっとしてどうかしたの?」
「・・・ううん、何でも無いよ。ちょっと考え事してただけ」
考え事していたと言うヒロキ、だがその表情は考え事してたというより、どこか不安な感じであった。
「いーや、あたしにはそうには見えないよ!何となくだけど、ヒロキは何かに不安を感じてる気がするんだ!でもあたしにはその不安が何なのかは分からないけど・・・」
ヒロキの顔を見て、少し声を荒げて言うイズキ、こういう言い方になるのも、ヒロキの事を心配しての事である。
「私もそう思うわ、今日のヒロキくん何か元気ないもの」
アルトもイズキと同様に、ヒロキの事を心配していた。
「心配してくれてありがとう。実は昨日からずっと嫌な予感がしていたんだ」
「それって、今日のゾイド暴走の事?」
イズキがヒロキに問い掛ける。
「・・・いや、それとは違う感じ、でも薄々だけど、沢山の気配がこの街に向かって来る、そんな感じがしたんだ」
ヒロキは僅かながら、傭兵達がユートシティを襲撃する為に向かっている事を感じ取っていた。当然イズキとアルトには、その事は分からない。
「沢山の気配が向かってるってどういう事?」
アルトがヒロキが言った事に対して問い掛ける。
「そこまでは僕にも分からないんだ・・・」
ヒロキも、ただ気配を感じ取っただけで、何故向かっているのまでは分からなかった。
「でもヒロキの表情からして、嘘言ってるとは思えないし・・・」
「ヒロキくんの言ってる事が本当だとしたら・・・」
イズキとアルトは、ヒロキが言っていた事をゴルザへと伝えた。ゴルザはすぐさまパイロット達にユートシティの周りに配置する様にと、社内アナウンスを通して命じた。パイロット達は急いでゾイドに乗り込み、ユートシティの周りにつく。勿論その中にはヒロキ達エースパイロットも含まれていた。
「なぁヒロキ、お前の言った事って本当の事なのか?」
若干ながらも、ヒロキに疑いを持つライサー。
「うん、間違い無い、段々気配が強くなってきてるから、結構近くまで来てると思う」
「ところで何でそんな事が分かるんだ?」
ライサーは、ヒロキが何故何かの気配を感じ取れる事が出来るのか不思議に思っていた。
「それは僕にもよく分からないんだ、知らないうちに出来る様になってたんだ。そんな事より、来たみたいだよ、沢山のゾイドが」
「何だって!?」
ライサー達が目の前を見ると、赤いバンブリアンを筆頭に、様々なゾイドで編成された集団がこちらへと向かってきたのだ。
「味方・・・では無さそうね」
「みんな気を付けて!来るよっ!」
ヒロキが言ったとおり、その集団のゾイド達は、ヒロキ達のゾイド目掛け攻撃を始める。Zi-worksCorporationのコマンドウルフ達は散開して攻撃を何とかかわす。
「皆さん全力で戦いましょう!」
「このユートシティを俺達の手で守り抜くんだ!」
<おーっ!!!>
アルトとライサーの掛け声で、パイロット達の士気も上がる。
「あたし達も精一杯戦おう、ヒロキ」
「勿論だよ、行こう、イズキ。そして、ブレイジングウルフ」
ヒロキ達Zi-worksCorporationのゾイド達は、傭兵達が乗るゾイド集団に向かっていった。
* * *
一方、傭兵の街では、赤いジェノザウラー1体に、何者かの手によって暴走したガイロス帝国のゾイド達が襲撃し、傭兵の街の傭兵達が応戦していた。
「こいつらが暴走したっていうゾイド達か!?」
「その様じゃのう、じゃがわしには誰かがコントロールしてる気もするがな」
リオン達もまた、傭兵の街を守る為に戦っていた。ギルフォートは、ガイロス帝国のゾイド達は、実は暴走では無く、何者かが陰でコントロールしているのでは無いかと睨んだ。実際ギルフォートの憶測は当たっていた。
「でも、あそこにいる帝国のゾイド達は、全体の半分程ってDr.クロノスが言っておりました」
「てことは、まだ半分違う場所にいるって事ですねユキエさん」
ここにいるガイロス帝国のゾイド達は、全体の半分程と他の人達に伝えるユキエ。それにリオンが答える。
「そういう事になるわ」
「リオン、ユキエ、お喋りしてる暇は無いぜ!」
ローダは、リオンとユキエに戦いに集中する様促す。
「そうね、今は目の前の戦いに集中しなくちゃね」
「お前に言われるのは何か気にくわないが、今はそんな事言ってらんねぇな」
ユキエとリオンは戦線へと戻る。ローダは、AZ250mmロングレンジキャノンの代わりに装備したロングレンジライフルと、格闘攻撃を使い分け、次々と敵機を撃破していく。ローダだけでは行き届かない所を、ギルフォートの高い射撃能力で補っている。
一方、ユキエとリオンは、他の傭兵達と共に戦っていた。リオンのカノンフォートは、突撃で蹴散らしながら突き進み、ユキエのグレートサーベルは、ミサイル、レーザー、3連衝撃砲を場面に応じて使い分け、正確な射撃力で、確実に敵機にヒットさせていく。
進んで行く内に、赤いジェノザウラーに遭遇するユキエ、リオンと他の傭兵達。ジェノザウラーの周りには、既にジェノザウラーによって、傭兵達のゾイドが無残な姿で倒されていた。
「あのジェノザウラー、暴走ゾイドとは違う雰囲気がするわ・・・」
「確かに、他の奴より強そうだな・・・、だが俺達だって負ける訳にはいきませんよ、ユキエさん」
「ええ、その通りよね、全力でいきましょう!」
<おーっ!!!>
ユキエにリオン、それに同行した傭兵達は、一斉にジェノザウラー目掛け攻撃を開始する。
まず、ユキエのグレートサーベルを筆頭に、数機のコマンドウルフLCとモルガキャノリーの一斉砲撃を、ジェノザウラーに叩きこむ、ジェノザウラーは、避けようともせずまともに食らい、ジェノザウラーのいた場所には黒煙が立ち上がる。その直後に、リオンの黒いカノンフォートと、その後ろにコマンドウルフLC数体が、黒煙の場所目掛け突撃していく。
「あれだけの砲撃を食らえば、結構なダメージを負っているに違いない。今の内に追撃だ!」
この戦法は成功するかと思われていた・・・、だが、予想は見事に覆される事となった。何とあれだけの集中砲火を受けたにも関わらず、カノンフォートの突撃を片手で受け止めるジェノザウラー。
「何!?あの集中砲火を受けてる筈なのに、殆どダメージを受けてないだと!?」
集中砲火を受けて平然としているジェノザウラーに、驚きを隠せないリオン。無理も無い、何とジェノザウラーは、殆ど無傷だったのだ。
そして、受け止めていた手で、カノンフォートを投げ飛ばす、カノンフォートはなす術無く地面に叩きつけられる。
「ぐっ・・・、何てパワーだ」
後続のコマンドウルフLC達も、ジェノザウラーの尻尾で薙ぎ払われ、次々と行動不能になっていった。
「そんな・・・、殆ど傷が付いてないなんて・・・」
驚きを隠せないのは、ユキエも同様だった。徐々に迫るジェノザウラーに、恐怖で思わず後退するユキエのグレートサーベル。
「しっかりして下さいユキエさん!まだ俺達だって戦えるぜ!」
「そうですよユキエさん、まだ俺がいる事を忘れないで下さい」
「リオンさん、それにみんな・・・、そうよね、まだ戦える者はいるものね。私もしっかりしなくちゃね」
リオン達に勇気づけられ、戦う意思を取り戻したユキエ。
「それじゃユキエさん、全力を尽くして戦い抜きましょう」
「ええ」
そう言ってユキエは、迫り来るジェノザウラーにグレートサーベルのミサイルをぶつけ、距離を置く、リオンもジェノザウラーから一定の距離を取る。
他の傭兵達は、ジェノザウラーに砲撃して、ユキエとリオンから気を逸らさせる。だが、
「・・・それで気を逸らさしてるつもりか?」
ジェノザウラーのパイロットらしき人物が、ジェノザウラーのコックピットの中でそう呟くと、周りにいるコマンドウルフLCやモルガキャノリーに、猛烈な勢いで攻撃を始めた。
ある者はレーザーライフルで撃ち抜かれ、またある者は爪で引き裂かれ、またある者は尻尾に薙ぎ払われ、またある者は踏み潰され、瞬く間に周辺にいた傭兵達のゾイドを一掃し、ジェノザウラーの周りにはリオンのカノンフォートと、ユキエのグレートサーベルだけであった。
「傭兵さん達があっという間に全滅だなんて・・・」
「化け物じみたパワーを持っていやがるぜ、あのジェノザウラー」
ジェノザウラーの圧倒的なパワーを目の当たりにする二人、そして、対峙するジェノザウラーと、グレートサーベル、カノンフォート。
「では、俺がジェノザウラーに接近戦で攻めるので、ユキエさんは援護射撃を頼みます」
「ええ、分かったわリオンさん」
リオンのカノンフォートは、接近戦を仕掛ける為、ジェノザウラーに向かって走り出す。ユキエのグレートサーベルは、時々動きながら、様々な射撃武器で、リオンのカノンフォートを援護する。
「うおおおおーっ!」
カノンフォートはジェノザウラー目掛け突進する、だがジェノザウラーはあっさりとかわし、レーザーライフルでカノンフォートに攻撃する。
「ぐわぁっ!」
突進した勢いでかわし切れず攻撃を食らい、そのまま転倒するカノンフォート。ジェノザウラーはすかさずカノンフォートに迫り来る。
「むっ!?」
その時、ジェノザウラーにミサイルが数発ヒットした。ユキエのグレートサーベルが放ったミサイルだった。
「大丈夫!?リオンさん!?」
「ああ、何とか・・・」
ユキエのお陰で、何とか立ち上がる隙が出来たリオンのカノンフォート。
「貴様らに見せてやろう、圧倒的な力の差をな」
ジェノザウラーのパイロットは、今まで以上に殺気を放っていた。
「いけぇぇぇっ!!」
立ち上がったカノンフォートは、ジェノザウラーに向け全速力で突進する。
「邪魔だ!」
だが、カノンフォートの全速力の突進も空しく、ジェノザウラーの尻尾の一撃で思いっきり吹き飛ばされる。その際、角と砲塔が破壊されてしまった。
「やあっ!」
その隙にグレートサーベルが、ミサイルと衝撃砲で攻撃するが、ジェノザウラーは攻撃を見切り、すぐさまかわし、グレートサーベルに向かい、グレートサーベルに向け爪を振りかざす。
「そう簡単には当たらないわ!」
グレートサーベルは横にステップして攻撃を避ける。
「甘いな」
ジェノザウラーは、すかさずグレートサーベルの方へと向き、もう片方の腕の爪を射出し、グレートサーベルの左前足を捉える。
「しまった!」
ユキエは操縦桿をガチャガチャ動かし爪を足から離させようとするが、爪はがっしりと食い込んでいて離れない。その間にジェノザウラーがさっき振りかざした腕の爪を射出し、グレートサーベルのもう片方の前足を捉える。
「きゃあ!」
両前脚を捕まれ、動く事が出来ないグレートサーベル。するとジェノザウラーは、射出した爪に付いているワイヤーを通して爪に電流を流す。
「きゃあああぁぁぁ!!!」
電流はグレートサーベルだけで無く、パイロットのユキエにも襲う。
「ユキエさんっ!」
助けに向かおうとするリオンだが、武器も壊され、まともに動く事が出来ない今のカノンフォートでは、どうする事も出来なかった。
「クソッ、武器も壊された上に足もいかれちまってる・・・、今の俺じゃどうする事も出来ないのかよ!」
何も出来ない自分に苛立ちを覚えるリオン、苦しんでるユキエをただ見る事しか出来ない自分が悔しくて仕方が無い感じであった。
「ユキエっ!」
ローダもユキエを助けようとするが、目の前に暴走ゾイド達が立ち塞がった。
「チッ、こんな時に邪魔しやがって!」
思わず舌打ちをするローダ、そんな彼を見たギルフォートは、
「先走るなローダ!まずはこいつらを片付けるぞ」
「ああ、そうするしか無いみたいだな。待ってろよ、ユキエ!」
ローダとギルフォートは、立ち塞がったゾイドを蹴散らし始めた。
その間にもグレートサーベルに電流が流れ続け、ユキエも電流を浴び続けていた。やがて電流が止まった。
「うぅ・・・」
電流を浴び続けていた為、ユキエの意識はもうろうとしており、まともに操縦すら出来ない状況だった。
ジェノザウラーは、射出した爪のワイヤーを引き戻し、爪に食い込んでいるグレートサーベルを目の前まで引きずり込む。もはやグレートサーベルは抵抗出来る状態で無かった。そしてグレートサーベルを目の前に引きづり込み、前脚に付いていた爪を外すなり、ジェノザウラーは、足で何度もグレートサーベルを踏みつける。ユキエはその衝撃で気を失ってしまった。
「では、最後の仕上げだ」
グレートサーベルを何度も踏みつけた後、ジェノザウラーは一旦距離を取り、直ぐに荷電粒子砲発射態勢を取る。
「ユキエさんーっ!!」
リオンの必死の叫びも、気を失ってるユキエの耳には届かなかった。
「これで終わりだ」
ジェノザウラーが荷電粒子砲を、グレートサーベルに向かって発射しようとしたその時!
「ユキエちゃん!」
街の入口の方で化石色をしたジェノザウラーが、赤いジェノザウラーに向け荷電粒子砲を放つ。
「何!?」
赤いジェノザウラーは、急いで向きを変え、化石色のジェノザウラーが放った荷電粒子砲に向け荷電粒子砲を放つ。互いの荷電粒子砲はぶつかり合い大爆発を起こす、相打ちの様だ。
「何故あのジェノザウラーが、ぐっ!」
赤いジェノザウラーに数発の銃弾がヒットする。傭兵達のゾイドの砲撃よりも効いていた。
「やっとこさ辿り着いたぜ!」
赤いジェノザウラーに攻撃したのは、ローダのコマンドウルフだった。それと、ギルフォートのケーニッヒウルフMk-Ⅱも一緒だった。
「ここからはボク達の番だ!」
化石色のジェノザウラーも赤いジェノザウラーの元へ駆けつける。このジェノザウラーのパイロットは何とフェイラだったのだ。
「ふ・・・、流石にコイツじゃこれ以上はきついか、引き上げるか」
そう言った赤いジェノザウラーのパイロットは、この場から引き上げていった。そしてその場には、一部内部が見える状態で力無く横たわるグレートサーベルと、武器と駆動部を破壊され、動けないカノンフォート、ローダ、フェイラ、ギルフォート、残った傭兵達のゾイドだけが残っていた。
「あ、待てぇ!」
「待て、追撃する必要はない」
ローダは、追撃しようとするフェイラを止めた。そして、ユキエの方へと向き、ハッチを開け、
「今はそれよりもユキエの身を心配する方が先決だ」
「それもそうだね、ボクもユキエちゃんの事は心配だし」
ローダとフェイラはゾイドから降りて、ユキエのグレートサーベルへと急いだ。
「ユキエ、無事でいてくれよ!」
「ユキエちゃん、死なないでね!」
ローダとフェイラは、傭兵達に協力してもらい、グレートサーベルのハッチをこじ開ける。中にはぐったりとしたユキエがいた。
「ユキエちゃん・・・」
ユキエの姿を見るなり泣きそうになるフェイラだったが、ローダが、
「待て、そう早まるな。辛うじて息はしているようだ。あれだけ電撃を浴びておきながら気を失うだけとは、奇跡に近いな」
長時間電撃を浴びていた筈なのに、気絶だけで済んだユキエに驚きを見せるローダ。普通ならショック死してもおかしくない程の量の電撃であった。
「ユキエさん大丈夫ですか!?俺が不甲斐無いばかりに・・・」
遅れてリオンが駆けつけて来た。自分がユキエを守れなかった事に責任を感じてる様だ。
「ああ、何とかな。リオン、お前こそ大丈夫なのか?」
「俺は何とかな、だがカノンフォートはあの有様だ」
ローダはカノンフォートを方を見る。そして、視点をリオンの方へと戻す。
「お前も良く頑張ったじゃねぇか、そう一人で抱え込もうとするな。俺達にも責任はある」
「俺に対する慰めのつもりか?」
「そうじゃねぇよ、リオンも傭兵としては中々の実力者だ、ここで死なれても困るからな」
「そうかよ・・・」
ローダにそう言われて少し照れるリオン、今までローダにこんな事言われた事は無かったからだ。そして話はユキエの事へと戻る。
「・・・もしかしてこのお嬢ちゃんは、電気に対して抵抗力が備わっているのかもしれぬな」
と言うギルフォート。
「流石にそうでは無いだろ、多分グレートサーベルがコックピットの方に電流を行きにくくしたんだろうと思う」
「もしかしてこの機体の本当の持ち主であったエンジ様がユキエちゃんを守ってくれたのかも・・・」
そう言うフェイラ、確かにこのグレートサーベルの真の持ち主は、今は亡きシーパータウンの英雄であり、ユキエの父であるエンジの物である。
「そうかもしれないな・・・(親父さん、ユキエを守ってくれてありがとな)」
心の中でエンジを感謝するローダであった。
「それじゃ早急にこのお嬢ちゃんの手当を、そしてこのグレートサーベルとカノンフォートをDr.クロノスの元へ運ぶ様に」
ギルフォートの指示の元、ユキエは救護班によって傭兵の街の病院へと運ばれ、グレートサーベルとカノンフォートは、駆け付けたDr.クロノスの助手のジョシュアが乗るグスタフによって研究所へと運ばれていった。
* * *
ユキエとリオンがジェノザウラーと戦闘をしていたその頃、ユートシティの目の前で、Zi-worksCorporationの者達と傭兵達が激闘を繰り広げていた。
ライサーは、Zi-worksCorporationのパイロット達の先頭となって、傭兵達のゾイドと戦っていた。一方、ヒロキ、イズキ、アルトは、赤いバンブリアンと交戦していた。
「あのゾイド、結構強いな・・・」
「見かけによらず機敏に動くから、あたし達の攻撃が中々当たらないし!」
「私達3人掛かりでもこんなに苦戦するなんて・・・」
ヒロキ達は赤いバンブリアンに苦戦を強いられていた。
「3人掛かりでこの程度とは、お前達も大した事無いな」
「なんだとー!」
「落ち着いてイズキ!今は戦いに集中しよう」
「そ、そうだね、ヒロキの言う通りね」
赤いバンブリアンのパイロットの言葉に怒りを見せるイズキだったが、ヒロキが何とかイズキをなだめた。
「そうか、それではこちらから行かせてもらおう」
バンブリアンの両肩に付いてあったタイヤらしき物を外しだした。するとそれは地面に着くなりヒロキ達の方目掛け走り始めたのだ。
「何だあの武器は!?」
「みんな、気を付けてっ!」
ヒロキ、イズキ、アルトは、迫り来るタイヤらしき物を、横にステップしてかわす。
「ヒロキくん、イズキちゃん、横!」
「「えっ!?」」
アルトの言う通り、タイヤらしきものは方向転換をし、ヒロキのブレイジングウルフとイズキのクイックサイクスの横目掛けて来た。
「おっとと」
「わっと」
何とかタイヤらしきものを避けるヒロキとイズキ。
「サンキュー、アルトのお陰で助かったよ」
「アルトちゃんが気付かなければ、僕達あれにまともに当たってたよ」
「あ、そんな・・・、お役に立てて嬉しいです」
アルトに感謝をするヒロキとイズキ。
「今度は俺自身が貴様らを切り刻む」
バンブリアンがヒロキ達の方目掛け走ってくる。その間タイヤらしきものがバンブリアン元へ行き、元の場所へと戻る。そして、そのタイヤらしきものの側面から剣を展開しだした。
「タイヤらしき物から剣が飛び出して来た!」
「一体何なんだあれは!?」
二人はかわそうとするが、以外にも剣のリーチが長く、ブレイジングウルフSAの片方の3連キャノンと、クイックサイクスの片方のバスタークローを切断した。
「「何ぃ!?」」
そのままの勢いで、アルトのグラブゾンザウラーに突っ込むバンブリアン、グラブゾンザウラーは吹き飛ばされる。
「きゃあっ!」
「大丈夫、アルトちゃん!?」
「私は大丈夫よ・・・」
「人の心配より自分の心配をする事だな」
「う、しまった!」
僅かな隙に、バンブリアンにもう片方の3連キャノンも切断されてしまった。
「うわっ!」
今の攻撃で怯んでしまったヒロキ。バンブリアンは追撃しようとした時、
「ヒロキから離れろー!!」
クイックサイクスが、もう片方のバスタークローを回転させてバンブリアンに突撃するが、剣によって受け止められてしまう。
「何っ!?止められた!?」
バンブリアンは、受け止めていたバスタークローを弾き返した。その際にクイックサイクスはバランスを崩してしまい、その隙を突かれ、もう片方のバスタークローを切断する。
「くぅぅ・・・」
バランスを崩し、転倒するクイックサイクス。バンブリアンがクイックサイクスに斬りかかろうとした時、ヒロキのブレイジングウルフSAがバンブリアン目掛け飛び掛かる。
「そうはさせないよ!」
爪を振りかざすが、剣に受け止められ、そのまま弾き返される。ブレイジングウルフSAは素早く受身を取り、次の攻撃を繰り出す。バンブリアンも剣でブレイジングウルフSAに攻撃する。爪と剣は激しくぶつかり合い、火花が舞い、乾いた金属音が鳴り響く。
「少しはやる様だな」
「僕だって弱い訳じゃ無いんだ!」
その後もブレイジングウルフSAとバンブリアンの一進一退の激闘が続く。
「す、凄い・・・、いつの間にヒロキ、あんなに強くなっていたの・・・」
短期間でここまで強くなったヒロキの戦いぶりに、イズキはただ見る事しか出来なかった。
ブレイジングウルフSAとバンブリアンの激闘が続く中、アルトは、バンブリアンの動きをうかがっていた。そして、バンブリアンが後ろを向いた状態で、グラブゾンザウラーの正面に来た瞬間。
(今だっ!)
アルトの心の中の掛け声をし、グラブゾンザウラーはバンブリアン目掛け、2門の大型レーザーを放つ。
「何だと!?」
バンブリアンのパイロットは、突然の攻撃に反応し切れず、レーザーを受けてしまった。左半分のパーツが吹き飛び、前後左足にもダメージを受けていた。
「不意打ちとはな・・・、何っ!」
直後にブレイジングウルフSAが飛び掛かり、爪を振り下ろす。
「てやぁぁぁっ!!」
先程の攻撃で左半分がまともに動けない今のバンブリアンにはかわしきれず攻撃を食らってしまった。装甲の一部に傷痕を付けた。
「ぐっ・・・、状況的に考えて引き上げておくのが無難だな。お前達、この辺で引き上げるぞ!」
バンブリアンのパイロットは、傭兵達に退却の掛け声をし、この場から去って行く。そしてバンブリアンのパイロットは、
「最後に一つだけ聞かせてもらおう、君達の名は?」
「僕はヒロキ、ヒロキ・バラート」
「あたしはイズキ、イズキ・ラピレス」
「私はアルト、アルト・ソネード」
ヒロキ達はそのパイロットの言う通り、それぞれ自分の名前を言った。するとそのパイロットは、
「そうか、覚えておこう」
そう言ってバンブリアンは動かない足を引きずりながらこの場を去っていった。
「おい、待てっ!」
「イズキ、目的はユートシティを守る事だ、深追いする必要は無いよ」
「確かにそうだけどさ・・・、あたし良い所なしだよ・・・」
ヒロキに制止され、少し不満げな表情を浮かべるイズキ。
「そういう時もあるって、イズキちゃん」
何とかイズキをフォローしようとするアルトだが。
「それ全然フォローになってないよアルト」
「はうっ、すいません・・・」
軽く溜息を吐くイズキ、アルトは驚いた表情をしていた。
「それはそうと、あの傭兵さん達は一体何故ここを襲って来たのでしょうか?」
あの傭兵達が、このユートシティを襲いかかって来た事に不思議に思うアルト。まさか彼女の祖父がこの事を企てた事は知る筈も無かった。
「あいつらはローダとかの傭兵の街にいる傭兵達とは違うのか?」
ローダや傭兵の街の傭兵達との関係性があるのか、ヒロキに問い掛けるイズキ。
「ううん、ローダさん達とは違う感じがする。少なくとも僕達やローダさん達の敵である事は間違いないと思うんだ」
「何でそこまで分かるんだ?」
「え~と、そのぉ~・・・、何と無くそう思っただけだよ、あはは」
「何だそりゃ」
イズキの指摘に、上手く誤魔化すヒロキ。あの傭兵達を敵だと感じ取った事を言える訳が無かった。
(それに、何処かで物凄い力を持つ者を感じる、一体誰なんだろう・・・)
ヒロキは何処かで、強大な力を持つ存在を感じ取っていた。後にその強大な力を持つ存在がヒロキの身を危機にもたらす事となろうとは・・・
「ヒロキく~ん、イズキちゃ~ん、ライサーさんから連絡あってユートシティに戻る様にだって」
アルトが、ライサーの連絡でヒロキとイズキにユートシティに戻る様伝えた。
「お~、分かったよ~」
「それじゃ戻ろうか」
ヒロキ達はユートシティへと戻っていった。しかし確実に状況は悪くなる一方である。
* * *
その頃、とある共和国軍の基地・・・だった場所は、今や火の海と化し、無残にも破壊された共和国のゾイド達があちこちに倒れていた。そしてその中にたった一機の黒い金属色で、赤いフレームをした頭部の形状が少し変わってるバーサークフューラーが立っていた。
「みんな弱くて・・・、つまらない・・・」
そのバーサークフューラーに乗っている少女が小さくそう呟いた。
実は、彼女が乗るバーサークフューラー一機だけで、この共和国基地の部隊を全滅させ、基地を壊滅させた張本人であったのだ。そしてバーサークフューラーは、この場から何処かへと走り去っていった。
#14(前編) 完 #15(後編)へ続く