#2 赤き光龍 | 著/Ryuka |
昨日の市内に野良ゾイド侵入、暴走騒動から翌日、あの野良ゾイドはZi-worksCorporationによって治療され、人里離れた野に帰された。
そしてその翌日、ヒロキら3人は社長のゴルザ・ラピレスに社長室に呼び出されていた。
「で、君達に依頼を頼みたいのだが・・・」
「何ですか、つい2日前もあんな騒動があったばかりじゃないですか」
「まぁ、そういうお前は行ってないんだけどな」
「誰かさんに殴られてのびてたからな」
「・・・何だって?」
「いや、何でも無い」
「あはは・・・、って依頼って何なんです?社長」
「あぁ、その依頼というのは、野良ゾイドの駆除だそうだ。依頼主はこの近くの村の村長だ」
「また野良ゾイドですか?」
「うむ、ここ数日前から集団で現れる様になって、その村を含む近隣の地域で被害が出ているらしい」
またしても野良ゾイドに関する依頼だった。こういう依頼は少なくは無いのだが、集団でというのはあまり無く、どちらかと言うと、1〜3機位が殆どだった。
少ない数ならば、Zi-worksCorporationに所属する一般のパイロットで依頼を受けさせているが、流石に今回は数も多いとの事で、ヒロキ達エースパイロットが呼ばれた訳だ。
エースパイロットと言っても、普段から何もしてない訳では無く、それぞれ個人、または2人で依頼をこなしている。3人で依頼を受ける事はまず無い。
「よーし、またあたしが全部まとめて片付けてやる!」
「だめだよイズキ、前回の時とは違って、今回は集団なんだよ」
「ヒロキの言うとおりだぜ、お前また無茶して真っ先にやられるのがオチだぜ」
「う、うるさーーい!!」
「まぁまぁ、とにかく依頼主のいる村まで向かって行ってくれ」
「「「了解!」」」
すぐさま彼らはそれぞれの機体に乗り込み、依頼主のいる村まで向かって行った。
* * *
依頼主のいる村にいると言われる村に着いた僕達は、機体から降りて、村の入り口にいる一人のおじいさんから話を聞いた。どうやらこのおじいさんが依頼主である村長であった。
「本日はこの様な依頼を受けて頂き、誠に有難うございます。」
「いえいえ、この様な依頼を引き受けるのが僕らの仕事ですから」
「ありがとうございます。ではこんな場所で話をするのは難かと思いますので、私の家まで案内しましょう」
こうして僕らは村長の言うとおりに案内され、村長の家にたどり着いた。その道中、村の建物には生々しく野良ゾイドによると思われる傷跡や、ゾイドの残骸が至る所に残されていた。
「実は、ここ数日前から野良ゾイドが集団で現れだして、この村を中心に襲いだしまして、お陰でこの村は廃墟同然と化してしまって・・・」
「何か対策とかはされたんですか?」と聞くライサー
「ええ、村のゾイド乗りが駆除しようと奮闘しましたが、いかんせん数が多すぎるので、駆除する前にやられてしまうのです」
「とりあえず大まかな状況は分かりました。それでその野良ゾイドとはどういうゾイドで、数はどれ位いるんですか?」と質問するイズキ。
イズキもちゃんと敬語が使えるんだなって、内心ちょっと嬉しかった。
「う〜ん、そのゾイドというのはレブラプターで、数は大体150体程です」
「「「ひゃ、150体・・・」」」
流石にそれは数が多いというのも頷ける気がする。しかも村長はさらに僕らを驚かせる事をさらっと言い出した。
「実はこの数でも少なくなった方なんです。最初に襲い掛かってきた時には、この数字の倍位いました。村のゾイド乗り達の奮闘で何とか今の数まで減らす事が出来ました。数人程犠牲が出てしまいましたが・・・」と言った後に悲しそうにうつむく村長
「分かりました。犠牲になった村の人達の為にも僕達が1体残らず駆除してみせます!」
僕は悲しそうな村長を見てるとこう言うしか無かった。1体残らず駆除すると言ったけど、実際そんな自信はどこにも無かった。不安だった。本当に出来るのかって。でも村長や、村を守る為に犠牲になった村の人々の為にも、ここはもうやるしかないんだって事を!
その後僕は、残った村の人達の事を聞いたら、野良ゾイドの被害が及んでない街に避難させてもらってるとの事、村長はこの村の一番の責任者との事で今もこの村に一人で残ってるそうだ。
そして村長に教えてもらった野良ゾイドが良く現れる山岳地帯へ向かう事にした
* * *
山岳地帯に着いた僕らは三手に分かれて行動した。その間イズキやライサーとは通信でやり取りをしていた。
「流石に150体ともなれば数が多いな、何かタリぃなぁ・・・」とモニターの向こうで面倒臭そうにぼやくライサー
「うん、そうだね。でもその分気を引き締めていかなきゃね」
と、もう一方のモニターに移るイズキが、普段のイズキらしくない事を言った。
「でもその野良ゾイドはレブラプターだ。レブラプターは、ガイロス帝国が作り上げた接近戦重視の小型ゾイドで、限定的にオーガノイドシステムを搭載しているから、小型だからってあまり油断しない方がいい」
「え!?イズキ、お前そんなに頭良かったっけ?」
「何だよその言い方、あたしは確かに見た目からだと頭悪そうにも見えるかも知れないけど、本当はZi-worksCorporationの入社での筆記試験の時も満点取ったんだからな!」
「マジかよ、あの試験俺合格点ギリギリだったぜ。って自分で頭悪そうに見えるとこ認めてんだ」
「うぇ!?う、うるさい!!」
「どうやら図星みたいだな」
「・・・帰ったら覚えとけよライサー」
「まぁまぁ、でもイズキがそんなに頭が良かったなんて僕知らなかったよ」
本当に驚いた。イズキが頭が良かったなんて、確かにZi-worksCorporationの入社時の筆記試験はそこそこ難しい事で知られている。僕も満点では無かったが、点数は高かった方だと思う。しかしイズキはあの試験で満点を取っていたなんて、正直僕はすごいと思った。
僕の中のイズキは、入社時の技能試験の時に試験用のコマンドウルフを壊してまで相手をねじ伏せたのしか無かっただけに、この事実はもの凄く驚いた。良い意味でね。
イズキは顔を真っ赤にして僕にこう言った
「そう、そうなのか、ありがとうな・・・」
「ははっ、照れてやんの」
「何だとーー!?」
「そこがまた・・・って、どうやら出てきたようだぜ」
「うん、こっちも出てきたみたいだね」
僕らが話してる内に次々とレブラプターが出てきていた。確かに数は多いみたい。イズキが何か言っていたが、聞いてなかったのでよく分からなかった。
「って、2人共あたしの話を聞けーーーー!!」
「ごめん、野良ゾイドが出て来たから通信切るね」
「分かった。そういうあたしも今野良ゾイドが出て来たところさ」
「それじゃ一段落着いたらまた連絡するよ。それじゃ」と言って通信を切り、戦闘態勢に入る。
「よーし、行こう。ブレイジング!」
そう言って僕は相棒のブレイジングウルフSAを野良ゾイドの群れに向かって進めた。
次々と野良ゾイド達はブレイジングウルフSAに向かって躍り出てくる。だがブレイジングウルフSAはそれらをかわし、砲撃や爪を駆使し、次々と野良ゾイドのレブラプターを倒していく。
「それじゃそろそろ使おうか・・・」
「インフィティバースト!!」
ブレイジングウルフSAから無数のミサイルが飛び出し、野良ゾイドの群れを一掃する。どうやらもうブレイジングウルフSAの周りには野良ゾイドがいない様だ。
一段落着いたヒロキはイズキに通信を試みる。どうやら繋がった様だ。
「こちらヒロキ、イズキ、そっちの調子はどう?」
「何とか数は減らせたけどまだ少し残ってる。てやぁぁぁ!!」と直ぐに通信が切れた。まだ野良ゾイドと交戦中の様だ。続いてライサーにも通信を試みる。無事繋がり、モニターでのライサーの表情を見る限り、イズキに比べると余裕そうだ。
「こちらヒロキ、ライサー、そっちの調子はどう?」
「大分倒してはきたが、まだ僅かに残ってるみてぇだな。そっちはどうよ?」
「僕の方はとりあえず全部倒したけど、まだいつ出てくるか分からないからここにいるよ」
「あぁ、分かった」と言い、通信が切れた。
「さて、少し進んでみるかな・・・」と進もうとした瞬間、どこからかの突然の砲撃。ヒロキは慌てながらもその砲撃を何とかかわす。
ヒロキが目を向けた小高い丘に見慣れないゾイドが二体、一体はバスターキャノンを装備した赤いT-REX型ゾイド。共和国の凱龍輝にも似ている。
もう一体は、背中に二本のブレードを装備した見た事の無い白い恐竜型ゾイドである。それぞれの機体に付いてるエンブレムを見る限り、ガイロス帝国の機体のようだ。
「君達は一体誰なんだい、何で急に僕に攻撃したの?」と2機のゾイドのパイロットに向け問うヒロキ。
「貴様に答える必要は無い」と言い、赤いT-REX型ゾイドがブレイジングウルフSAに接近してくる。
ヒロキはそれをかわし、すぐさま戦闘態勢に入る。
「どうやら君と戦わなきゃいけないみたいだね」
「フン・・・、それでいい」
(え・・・?)
今の言葉を不思議に思いながらもT-REX型ゾイドに向かって爪を振り落とすが、まるで来るのが分かってたかの様に攻撃をかわす。
(凄い、この人物凄く操縦が上手い!)
「でも僕だって負けないよ!」と言いながらすかさず砲撃、しかし、これもかわされる。
すぐさまバスタークローが来る。かすりながらもかわし、再び爪を振り下ろした。今度はヒットした
「よしっ!」
「甘いな」
「えっ・・・?」
何と当たったと思ったT-REX型ゾイドは後ろに下がり、尻尾を勢いよくブレイジングウルフSA目がけ回す。
これにはヒロキの駆るブレイジングウルフSAもかわせず、まともに食らい、勢いよく吹き飛ばされる。
「うわぁぁぁぁ!!」
起き上がろうとするブレイジングウルフSAの前にT-REX型ゾイドが現れる。バスタークローは既に回転しており、とどめを刺そうとしている。
「ここまでだな・・・」
(やられる・・・)と思った瞬間、白い恐竜型ゾイドに乗っていると思われるパイロットがT-REX型ゾイドのパイロットに向かって何か言ったと同時にバスタークローの回転が止んだ。
「やめろグラド!これ以上やると確実に軍法会議ものになるぞ!」
「チッ・・・、命拾いしたな」
(グラド・・・?このゾイドに乗ってるパイロットの事なのかな?)
「お前って奴は、上の方からあれだけ無意味な戦闘行為をするなと言われてるだろ!」
すると白い恐竜型ゾイドに乗っているパイロットがヒロキのブレイジングウルフSAの前に現れ、
「私はガイロス帝国軍大尉、レミュエル・クラシス。私の仲間のグラドが迷惑を掛けてすまない。」とヒロキに謝罪をした。
「それでは私達は基地の方に戻らないといけないのでこの辺で」
「あ、あの・・・」
「ん?何か御用でも?」
「・・・いや、何でもないんです。何でも」
「そうか・・・、ではまた」
そう言ったレミュエルという男が乗る白い恐竜型ゾイドは、T-REX型ゾイドと共にこの場から去って行った。
「・・・行っちゃった・・・」
それらを呆然と見つめるヒロキだった。
その後直ぐライサーの愛機のアグレッシブが現れ、アグレッシブはヒロキのブレイジングウルフSAの前まで行った。
「お〜い、そっちは終わったか〜」
「・・・・・・」
「お〜い、大丈夫か?」
「えっ!?あ、あぁ、大丈夫だよ」
「どうした、ボーっとして。それにお前の機体随分傷ついてるな」
妙に傷だらけのブレイジングウルフSAを見てライサーは不思議そうに言う
「ちょっと野良ゾイドの不意打ちにあっちゃって・・・」
笑いながら野良ゾイドの不意打ちだと誤魔化してヒロキは言った。まさか野良ゾイド駆除中にガイロス帝国の兵士に襲われたなんて言える訳も無かったからだ。
「ふ〜ん、お前にしちゃらしくねぇな。あ、それと山岳地帯の入口でイズキが待ってるから行くぞ」
「うん、それじゃ行こうか」
その後イズキとも合流し、依頼主の村長のいる村に行き、野良ゾイド駆除の報告をした後Zi-worksCorporationに戻り、社長に依頼完了の報告をした後、
ヒロキとイズキは、担当メカニックのツルヤにブレイジングウルフSAと、クイックサイクスの修理を頼み、帰る事にした。その道中
「いや〜、流石に今日の依頼は疲れたわ〜」
「ホントだね。今までに無い数の野良ゾイド相手にしたからね〜」
「おかげであたしのクイックサイクスは傷だらけだ〜」
「イズキはいっつも無茶するから傷だらけになるんだよ」
「言ったな〜、でも以外にアンタがこの手の依頼で傷だらけってのも珍しかったな」
「あ・・・、う、うん、僕だってたまにはドジ踏む事だってあるさ」
「あははっ、案外そうかもしれないな。あ、あたし家こっちだから、それじゃまた明日な」
「うん、また明日ね〜」
家路に着いたヒロキは、夕食を済まし、寝る前にあの出来事の事を考えていた。
「あのグラドって人、何故僕に襲い掛かったりしたのだろうか・・・」
「でも考えたってしょうがないし、今日は疲れたからもう寝よ」
そう言い、彼は眠りについた。あの出来事こそが、ヒロキとグラドの最初の出逢いだった出会いだった。
* * *
翌日、ユートシティから数キロ離れた切り立った崖の上に1機の銀色で赤いキャノピーのコマンドウルフACがいた。
「ここがあのZi-worksCorporationがあるユートシティか・・・」
その機体に乗っている青年がそう呟いた
#2 完、#3へ続く