#3 流浪の傭兵
著/Ryuka

 

「ここがあのZi-worksCorporationがあるユートシティか・・・」
その機体に乗っている青年がそう呟いた
この青年の名はローダ、ローダ・ガレス。傭兵達ではこの名を知らぬ者はいない程の有名な傭兵である。
ローダが乗るコマンドウルフACは、切り立った崖からユートシティを見た後、崖から飛び降り、ユートシティに向かって走り出した。

 

* * *

 

しばらくユートシティに走ってる途中に、一機のゾイドに遭遇した。早速ローダはパイロットがいないか確認する。
「そこのゾイドのパイロット、いるなら返事を求む」
「はい、僕がこのゾイドのパイロットですが」
返事が返ってきた。どうやらパイロットが搭乗している様で、しかもそのゾイドはブレイジングウルフSAで、乗っているのは勿論ヒロキであった。
「随分見慣れないゾイドに乗ってるなぁ」
「そうですか?確かにこのゾイドは見慣れないですよね」
「確かにな、ところで君はユートシティに住んでる人かい?」
「ええ、一応そうですけど」
「なら話が早いな、俺も丁度あそこへ向かってたところなんだ」
「そうなんですか・・・」
ヒロキは、ローダのゾイドを見てふと思った
(待てよ、いきなり用件も無く街に行くなんておかしい、もしかしたらこの人は悪い人なのかも・・・)
ヒロキは、ローダは自分に街まで案内させて、街の中で悪さでも行う人かと思い、疑いつつもローダに問いかける。
「ところであなたはユートシティに何の用があるんですか?」
「用ねぇ・・・、まぁ、知らない人には言えない用事かな」
(やっぱり!この人絶対街で悪さする人だよ)
とヒロキは心の中で呟くと、途端にローダに対して戦闘態勢に入る
「ん?一体何の真似だ?」
突然の状況に理解出来ないローダに対し、ヒロキは

「悪いけど、この先には行かせないよ!」
「ちょ、お前何言ってるんだ!?」
ヒロキはローダの話は耳には入っていなく、ブレイジングウルフSAはコマンドウルフACに向け爪を振り落とした。
ローダは攻撃をかわし、ヒロキに訴えかける
「どういう事だ!俺が君に悪い事でも言ったのか!?」
ローダは状況を全く理解出来ていない。それもその筈だ。道を尋ねていきなり攻撃されるなんて誰が思うのだろう?普通はいない
「俺はただZi-worksCorporationに用があって・・・」
その言葉がかえってヒロキに対して、火に油を注いでしまった。
Zi-worksCorporation!?なら尚更だよ!」
ヒロキは続け様にローダに攻撃をしかける。しかしそれを上手い具合にかわすローダ。
(こいつ、何か勘違いしてる様だし、人の話もまともに聞いてないな。仕方が無い、傷付けない程度に大人しくさせてやるか)
ローダは一旦、ヒロキのブレイジングウルフSAから距離を取り、それからブレイジングウルフSAの周りを一周する様に円状に走り出した。
「ここは絶対に外せない!あの街の為にも!」
ブレイジングウルフSAは、ローダのコマンドウルフACに向けキャノン砲を連続で放つ、ローダはそれを巧みにかわしていく
ブレイジングウルフSAがミサイルを放とうとした瞬間、コマンドウルフACは、ブレイジングウルフSAに向けキャノン砲を放つ。
「うわっ!」弾は、ブレイジングウルフSAの手前に着弾、と同時に砂埃が舞い上がり、ブレイジングウルフSAの動きが止まる。
ローダはこの隙を狙い、ブレイジングウルフSAの上にコマンドウルフACをのしかからせる。そしてローダはヒロキに
「お前何か勘違いしてないか?別に俺はあの街を襲うつもりなんて全然無いぞ」
「え!?」
そう、全てはヒロキの勘違いだったのだ

 

「僕の勘違いであなたに攻撃したりして、ごめんなさい」
ヒロキは、先程の件の事をローダに謝罪していた。
「まぁいいよ、ちゃんと用件を言わなかった俺にも問題はあるからさ」
ローダは笑顔で答えた。彼は先程の戦闘の事はあまり悪くは思っていない。
「それにしても君、中々の腕前だな」
「そ、そうですか?で、でもあなただってかなりの腕前だと思いますよ。僕の攻撃全部かわされてたし・・・」
「いくら腕が良くたって、そういう事はあるもんだぜ」
「そ・・・、そうですよね、何落ち込んでんだろ僕。」
ヒロキは何故か少しばかり頬を赤らめていた。
「あ、そういえばあの街のZi-worksCorporationに用があるんでしたよね。案内しますよ」
「あぁ、それは助かる」
そして、ヒロキとローダはユートシティへ向かって行った。

 

* * *

 

その後ユートシティに辿り着いたヒロキとローダは、そのままZi-worksCorporationへ向かい、ヒロキはローダをゴルザがいる社長室まで通した。
「社長、この人が社長に用があるそうです」
「おぉ、ローダ君。待っていたよ」
「「ローダ?」」
ヒロキと、丁度居合わせていたイズキがゴルザに聞いた
「あぁ、そういや君達はまだ知らなかったんだったな、この人は最強の傭兵と呼ばれてる男、ローダ・ガレスその人だ」
「えぇ!?嘘ぉ!?」
驚くヒロキ、何故なら先程の戦闘は、自分の勘違いだとはいえ、最強の傭兵ローダと戦っていたからだ。
「どうしたヒロキ?何故そんなに驚いているのだ?」
「そうだ、何でそんなに驚いてんだ?アイツと何かあったの?」
「いやぁ・・・、ちょっとね」
「何だよ、ハッキリしないなぁ」
ここでローダが、
「ちょっと彼と軽い戦闘となってね、ただお互い傷付かない程度にですが」
「本当かヒロキ!?」
「えぇ、ちょっと僕の勘違いで・・・」
「そうか、すまないなローダ君。私の専属パイロットがご迷惑を掛けまして、これ、ヒロキもローダ君に謝りたまえ」
「すいません・・・」
「いえいえ、彼には先程も謝ってもらいましたし、ところでさっきの専属パイロットって、彼の事ですか?」
「そうだな、この会社内ではエースパイロットとも呼ばれておる。先程の少年がヒロキ・バラート」
「あ、改めてよろしくお願いします。ヒロキと言います」
「そして隣にいる少女がイズキ・ラピレス、私の一人娘だ」
「イズキっていいます。よろしく」
「あと一人にライサー・シャナルというのがいますが、今は単独で依頼を受けに外出中ですが」
「へぇ〜、そうですか。こちらも改めてと、先程ゴルザ社長にご紹介頂いたローダ・ガレスです。これからもよろしく」
「「よろしくお願いします」」
そして少し間をおいた後、ローダがゴルザにある物を差し出した。
「あ、そうそう。この前仕事で共和国基地に寄った際に、ある軍人からこれをユートシティにいるゴルザに頼むって言われて渡されたものです」
「おぉ、これか。すまないねぇ、ローダ君」
「「何ですかそれ?」」
不思議そうに見るヒロキとイズキ。
「これは共和国に我が社のゾイドを提供するリストだよ」
「でも何故俺に頼んだんでしょうかね?共和国は」
「確かに言われるとそうだね」
「実は本来これを届けてくれる筈の共和国の軍人が、急に都合が悪くなって、偶然仕事で基地に来ていたローダ君に頼んだという訳だ」
「それじゃ傭兵じゃなくて、ただの配達員みたいなもんじゃん」イズキがローダがまるで宅配便の配達員みたいな言い方をした。
「こらイズキ、そういう言い方をするんじゃない!」
「だってぇ〜」
確かにイズキの言う事は間違ってはいない。だがローダは傭兵だ。傭兵だからそんな事しないと思っていた。
「はは、確かにイズキの言う通りかもしれないけど、傭兵は戦う事ばかりで無くて、こう言った雑務系や、配達系といった仕事も頼まれる事があるからな」
「へぇ〜、あたしはてっきり戦う事ばかりかと思ってた」
「確かに、傭兵のイメージは、軍同士の戦争に加わったり、何処かの用心棒とかで、何かと戦ってるイメージが多いけど、本当は意外と地味な仕事の積み重ねだったりするんだ」
「それならこういった平和な時代とかでも大丈夫ですね」
「平和な時代か・・・」
その言った後、ローダの表情が曇り気味になった。その表情を見て、ヒロキが問いかける。
「どうしたんですかローダさん?」
「いや、何でもない」
実際ローダは、傭兵としてあちこち旅をしている中で、未だに戦争が続いている地域があり、ローダ自信もそれに軍からの要請で参戦していた事もあってか、平和な時代とは思っていなかったからだ。
「ところでさ、思ったんだけど、父さん何でローダの事知ってんの?」
「私は元共和国の軍人だ、軍を退役した身であっても、共和国との繋がりはあるからな。時々軍人の間で話題になるそうだからな」
「そういえば社長とは確か、一度お会いしてましたよね」
「あぁ、確かあれは3年位前だったかな?私が共和国の基地にゾイド提供の為行った時に、基地の護衛として付いていた君にね」
「あの時はただ顔を合わせただけで、話はしてませんでしたね」
「あぁ、こうして君と話すのは今回が初めてだったりするんだがな」
意外にもゴルザとローダが共に話すのはこれが初めてだと言う事に、ヒロキとイズキは驚いていた。話し方を見ても、初めて話す様な感じには見えなかったからである。
「僕にはてっきり何度も会ってる感じがしました」
「あたしも」
「まぁ、彼は私以外にも知っている人は相当いるだろう。それだけの人脈に加え、知名度の高さもあるからの」
「そうですね、ただ最強の傭兵と言うのは傭兵達の間で流れる通り名みたいなもんですけど」
「そう呼ばれる程有名だって事だよ。これをライサーに言ったらショックだろうな、アイツローダの事知ってる様な事言ってたし」
この場にいないライサーのショックする顔を見るだろうと思い、顔がニヤつくイズキ。それを見ていたヒロキは少し困惑した顔をしていた。
そして時間は流れ、ローダがZi-worksCorporationから帰る時が来た。
「それじゃ、そろそろこの辺でおいとまさせて頂きます」
「そうか、今日はご苦労だったな、配達ばかりか、私のとこのヒロキ君がとんだ迷惑も掛けてしまった事ですしな」
「ホントすみません・・・」
「いいって事です、ヒロキもあんま細かい事気にし過ぎると次に進めんぜ」
「はい・・・」
「それでは、俺はこれで」
と言い、後ろに振り向き、社長室を後にするローダ。
その姿を見ていたヒロキはしばらくした後、ローダの後を追い、社長室から出ようとする。
「ちょっとヒロキ、どこ行くの?」
それを見たイズキがヒロキを止めに入る様な事を言う。
「ローダさんに言いたい事があるんだ。だから・・・、ゴメン、イズキ」
「あっ・・・」そう言い、社長室を出て、ローダの元へ走り出すヒロキ。
それを見ていたゴルザは、にこやかな顔をしていた。

 

* * *

 

その頃、Zi-worksCorporation内の格納庫にて、コマンドウルフACに乗り込み、キャノピーを閉めようとした時
「ローダさーん!!」
「何だ?」
突然何処からか自分の名前を呼ぶ叫び声が聞こえた。
それからまもなくして声の主が現れた。どうやらヒロキの様だ。ここまで走ってきたのか、息を切らしてる様だ。
「はぁ・・・、はぁ・・・、ローダ・・・さん・・・」
「どうした?そんなに息切らしてまで」
「あ、あの・・・、僕を・・・、あなたの弟子にして下さい!」
「えぇ!?で、弟子・・・?」
「ダメ・・・ですか?」
「いや、ダメって訳じゃねぇけど、何と言うか、弟子にしてくれって言われたのお前が始めてだったもんだったからな」ローダは、少し考え込んだ後、ヒロキに結論を出した。
「いいぜ、ヒロキの師匠になってやるの。近々この街に来てくれないか」
そう言って彼は、ヒロキにある場所の地図を渡した。
「地図の示す場所に俺は大概いる。もし分からなかったら社長とかにも聞いてみてくれ」
「はい!是非行かせてもらいます、ローダさん」
「おぅ、その時はみっちり教え込んでやるからな、ヒロキ!」
そう言った後、ローダはコマンドウルフACのキャノピーを閉め、そしてZi-worksCorporationから、いや、ユートシティから去って行った。
ヒロキはそれをじっと見守っていた。

 

#3 完、#4へ続く