#4 波乱のおつかい | 著/Ryuka |
何故かあたしはいつの間にか敵に囲まれていた。しかもそういう時に限って運悪くあたし一人だ。
どうしてこういう経緯になったのかと言うと、こんな事があったからだ。
話は数時間前に遡る。一本の電話から全てが始まった。
「はい、もしもし〜」
「え〜っと、イズキだよね?」
「そりゃあたしの携帯に掛ければあたしが出る位分かるだろ」
電話の相手は、あたしの友達のアリサ。いつもアリサから電話が来るとこんな調子。
多分分かってるとは思うけど、あえてわざとらしくやってるのだろう。
「まぁ、一応念の為ってやつ」
「どんな念だよ。で、あたしに何か用なの?」
「あ〜、そうだったね。きょうイズキ開いてる?」
「一応仕事はあるけど、今のところ依頼とか来てないから開いてる」
「良かった〜、ちょっとイズキに頼みたい事があってさ」
「買い物なら行かないぞ」
「それは分かってるって、今日電話したのは買い物の事じゃなくて、ちょっと届けて欲しいものがあってさ〜」
「そういう事なら普通に宅配便とかで頼めよ」
「それがさ、その届け先の場所に向かう途中、盗賊団の縄張りがあるらしくて、そこで襲われたって情報がいくつもあって、
宅配業者がそこを通らなくなって困ってるのよ」
「つまりそういう事を引き受けてくれそうだからってあたしに電話した訳か」
「そういう事。これも依頼の内に入るよね?」
「とりあえずは依頼にはなるわな。で、あたしはどうすればいい?」
「じゃあ私の家まで来てくれない?そこで届けて欲しい物を渡すから」
「分かった。今からそっちへ向かうわ」
「OK、それじゃ待ってるね」
プツッ・・・
こうして電話を切ったあたしは、すぐに父さん、いや社長に許可を貰い、今回の依頼主のアリサのいる家まで向かう。
数分後、あたしはアリサの家の前に着き、家のブザーを鳴らす。まもなくして依頼主が出て来た。
「お〜、来た来た〜」
「届けて欲しい物ってこれの事か?」
「そう、それ」
「で、これを何処に届ければいいんだ?」
「隣町のノークタウンに住んでるミンヤって人に」
「ミンヤって、昔こっちに住んでなかったっけ?」
「そうだけど、数年前に親の都合でノークタウンに引っ越したんだって」
「へぇ〜、そうなんだ。あたし全然知らなかったよ」
「私だって、最近ミンヤからのメールで初めて知ったもの。ところでさ」
「何?」
「こういうのって、報酬とかでお金とか払わないといけないものなの?」
「通常はね。でも友達からの頼み事にお金とか必要ないじゃん。だからそういうのは無しでいいよ」
「でもそれじゃタダ働きになるよ」
「いいって、別にあたしは例え仕事でも友達から金取る様な事はしたくないし」
「そう。優しいんだねイズキ」
「まぁ、そうなのかな。じゃあ、これ届けに行って来るわ」
「気を付けてねイズキ。あんまり無理しないでよ〜」
「分かってるって〜」
そう言ってあたしは、クイックサイクスと共にユートシティを出て、隣町のノークタウンへ向かう事にした
* * *
あたしはノークタウンへ向かって走っている途中、アリサの言ってた盗賊団の事が気になっていた。
(届け先の場所に向かう途中、盗賊団の縄張りがあるらしくて、そこで襲われたって情報がいくつもあって)
盗賊団か、そういやどんなゾイド使ってるとか、具体的な数は言ってなかったな。ま、出て来たら全部あたしが叩き潰してやるけどね。
でも場所や、ゾイドによってはあたしが不利になるかもしれないから、アリサの言うとおり無茶な事はしない方がよさそうだな。
「この前の野良ゾイド駆除の時だって、あたしだけボロボロになりかけてたから、もっと考えて行動しなきゃな」
そう自分に言い聞かせていた。あたしもこれ以上ヒロキやライサーの足手まといだけはなりたくないしね。
「それじゃ、ノークタウン目指して突っ走るぞー、サイクス!」
クイックサイクスはそれに答える様に勢いよく吠えた・・・感じがした。
丁度その頃、イズキの乗るクイックサイクスが走ってる場所から少し離れた場所に1機のデザートカラーのガンスナイパーがいた。
「随分珍しいゾイドが通り掛かったな。早速リーダーに報告だ」
乗っていたのは、例の盗賊団の1人だった。どうやらイズキのクイックサイクスに目を付け、盗賊団のリーダーに通信を始めた。
「何だ?急に呼び出して」
「リーダー、久々の獲物っすよ。しかもこれまた珍しいゾイドっでっせ」
「何!?それは本当か!?」
「本当も何も、この映像見れば一目瞭然っす」
とその盗賊団の下っ端は、盗賊団のリーダーに、クイックサイクスの画像を送って、リーダーにその画像を見せた。
「確かに見た事も無い珍しいゾイドだな。獲物としては上物だな」
「リーダーもお喜びの様で、あっしは嬉しいっす」
「まだ手に入れても無いのに喜んでどうする。この獲物は何処へ向かっていった?」
「丁度あっしらの縄張りのある谷間の道へ向かってるみたいでっす」
「何と、今日はつくづく俺達は運がいいな。では早速準備に取り掛かろうではないか」
「あの〜、あっしは?」
「お前はそこで次の獲物が来るのを見張ってろ!」
「そんな〜、それはないっすよリーダー」
第一発見者でもあったこの盗賊団の下っ端だったが、意外にも一番ツイてなかった悲しい人でもあった。
そんなこんなで、久々の獲物に、盗賊団のアジトの中が急に慌しくなる。
この盗賊団は、デザートカラーに施されたガンスナイパーを使い、縄張りでもある谷間の道を通りかかった者を襲撃し、
金目の物や、ゾイドを奪い、それを密売して荒稼ぎしている集団。
その襲撃方法はかなり卑怯臭く、前後に1機ずつ現れ、逃げ道を塞ぐ。これだと2機しかいない様に思えるのだが、
彼らは、谷という地形を活かし、谷の上に沢山のガンスナイパーを配備させ、そこからスナイパーライフルで一斉に狙撃するやり方である。
動けなくなったのを確認したら、一斉に谷から降りていき袋叩きにする何とも卑怯な戦法である。
「よ〜し、野郎共!準備は整ったかー!」
「おぅよー!!!」
リーダーの掛け声と共に沢山の部下たちの声が響き渡る。
「恐らく俺の予想だと、もうまもなく獲物が谷間の道を通る筈だ!野郎共!いつもの位置に付け!」
「りょーかい!!!」
またしても部下達の声が響き渡る。そうして部下達はアジトを出て、縄張りでもある谷間の道にて、いつもの位置に付く。
少し遅れてリーダーのガンスナイパーも谷間の道の谷の上に辿り着く。
「久々の獲物があんな珍しいゾイドとはな。きっと高値で売れるに違いない。フフフフ・・・」
盗賊団のリーダーは不気味な笑みを浮かべている。この事を知るよしも無いイズキは、迷う事無く盗賊団が潜む谷間の道へと向かっていた。
* * *
ノークタウンへ向かうあたしは、谷間の道までやって来た。ここを超えればノークタウンはすぐそこだ。結局ここまでの間、盗賊団らしきものには全く合わなかった。
アリサの言ってる事が嘘くさく思えてきた。あたしは迷わず谷間の道へ入っていった。
すると入って中間辺りに来たところで突然前後からガンスナイパーが1機ずつ出て来た。あたしはすぐさま戦闘体勢に入る。
「おや〜?君随分珍しいゾイドに乗ってるね〜」
「珍しいゾイドって、あたしが乗ってるこのゾイドの事か!?」
「お、乗ってるのはお嬢ちゃんか。ご名答、よく分かったね〜」
「お嬢ちゃんじゃねぇ!あたしにはちゃんとイズキって名前がある!」
やはりこいつら盗賊団みてぇだな。目的は恐らくあたしのゾイドを奪う事だろう。
「じゃ、遠慮なくやらせてもらおうか!」
前側にいたガンスナイパーがこちらに向かってくる。
「させるか!」
すかさずあたしは向かってくるガンスナイパーにバスタークローを突き刺す。
「おわっ!」
突き刺したガンスナイパーは機体の一部が砕けながら吹っ飛ぶ。後残りは1機。楽勝じゃんと思っていた。だけど実際そんなに甘くはなかった。
すると、残ったもう1機のガンスナイパーがおもむろに空に向けビームマシンガンを撃ちだした。
その時だった。突然強い衝撃が走った。
「痛ったぁ・・・、何なんだ!?」
それを合図にか、断続的に衝撃が走り続ける。
「うわっ!一体何処から・・・?ま、まさかっ!」
あたしはすかさず上を見る。僅かだが、ガンスナイパーの尻尾のスナイパーライフルが見える。しかも銃口はこちらに向けている。
「そうか!あの時空に向けて撃ったのは狙撃の合図を送る為だったのか!」
「あったり〜、だけど少し気付くのが遅かった様だね。大人しく俺らの的になりな!」
「そんなのやなこったい!」
あたしは目の前のガンスナイパーに向けて爪を振りかざす。油断していたのか、突然の攻撃に慌てだす目の前のガンスナイパーに乗ってる盗賊
サイクスの攻撃はガンスナイパーにヒットし、吹っ飛ぶ。
前後のを倒しても、問題は谷の上にいる奴らだ。何せあたしのサイクスは、ヒロキやライサーのような遠距離用の武器を持っていない。
まともに言えば不利過ぎる。谷を登ろうかと思ったが、両サイドから狙われている以上、登ってる最中に撃たれて落とされるのがオチだ。
かと言って、今のあたしにはどうする事も出来なかった。
「その装備だと、俺たちに満足に攻撃すら出来ないではないか」
そう言って谷の上から黒いガンスナイパーが現れた。
「お前がこの盗賊団を取り仕切る奴か!」
「さよう、この俺がこの盗賊団のリーダーだ」
「だったら、そこから今すぐ降りて戦え!」
「それは出来ないな。残念だけど君にはこいつらの的になってもらおうか」
「そんなの絶対・・・うわっ!」
再び一斉狙撃。避けようにも道が狭くて思うとおり動き回れない。ならばとあたしはバスタークローを展開させ、Eシールドを発生させ何とかこの攻撃を凌ごうと思った。
「ほう、Eシールドを持っているとは、だがいつまで耐えられるのかな」
確かに、Eシールドは無限じゃない。いずれシールドが破られる時がくる。だけどあたしにはどうする事も出来ない。せめて、ヒロキでもいてくれたら・・・
やがてEシールドの耐久値が限界値に達し、そして起きてはならない最悪な自体が起こった。それはEシールドが破られてしまった。
「遂にEシールドが使い物にならなくなったな。よし、野郎共、一気に撃ち込んでやれ」
「イエッサー!!」
盗賊団のリーダーの掛け声と共に、一斉にこちらに向かって弾が飛んでくる。避けれない上に、守る盾も無い。あたしのサイクスは砲弾の雨をまともに喰らってしまった。
まだ辛うじて動けるものの、もう一度同じのが来たら今度こそ最後かと思った。
「大分弱ってきたな。袋叩きにしてやれ!」
「イエッサー!!」
また同じ様な掛け声と共に、今度は一斉に谷から雪崩れ込む様に降りてきた。
あたしは必死に飛びかかってくるガンスナイパーを、バスタークローを使い次々と吹っ飛ばしていくが、不意に受けた攻撃で転倒してしまう。
起き上がろうとした瞬間、ガンスナイパー数機があたしのサイクス目掛け飛んでくる。
「う、うわぁぁぁ!!」
あたしはもうダメかと思った。思わず目に涙が浮かび上がった。そんな時だった。次々と飛び掛ってきたガンスナイパーが次々と吹き飛ばされていく。
すると奥から見えてきたのは銀色で赤いキャノピーのコマンドウルフAC。これと同じ様な機体何処かで見たような・・・
「大丈夫か、あんた。って、お前イズキじゃ・・・」
「も、もしかしてローダか!?」
「何ぃ!?ローダだと!?」
突然のローダ登場。あたしも驚いたが、何より一番驚いていたのは盗賊団のリーダーだった。
「な、何でここに!?」
「最近この辺りで盗賊団の被害が多発してたろ。それでそいつらを黙らせる為に俺がここに来たのさ」
「俺達を黙らせるだと!笑わせるんじゃねぇ!」
「そうだよ、ここはあたしも一緒に戦うよ」
「いや、ここは俺一人で十分だ。それにその状態だとまともに戦えんだろ」
確かにローダの言うとおり、あたしのサイクスは動けるのがやっとの状態だ。これだとまともに戦えないのはあたしでも分かっていた。
「で、でも・・・」
「心配すんなって、俺を誰だと思ってんだ?」
ローダは余裕な感じの笑顔であたしに言い返してきた。
「例え貴様の様な奴でも、この地形なら不利な筈だ!あいつともう一人の奴も一緒にやっちまえ!」
盗賊団のリーダーの掛け声と共に、地上にいるガンスナイパーはあたしのサイクスと、ローダのコマンドウルフに向けてビームマシンガンを、
谷の上からは、谷の上にいるガンスナイパー達が放ったミサイルがこちらに向かって飛んでくる。普通なら絶対かわせない筈だった。でもローダは違った。
「俺をなめてもらっちゃ困るなぁ!」
ローダは地上のガンスナイパー達に向かってビームマシンガンをもろともせず走り出した。
ローダは、コマンドウルフのキャノンを撃ち、ガンスナイパーを倒したと同時に、格闘攻撃で別のガンスナイパーを倒し、またキャノンを使い別のガンスナイパーを倒す。そして同じ様な事を繰り返していく。
谷の上から飛んで来たミサイルは、打ち落としたりせず、地形の悪条件を関係なしに動き回ったり、それを逆手に利用し、地上のガンスナイパーに同士討ちさせたりもした。
凄い!凄過ぎるよ!その様子を見ていたあたしは、流石は”最強の傭兵”と呼ばれるだけはあるなと思った。
するといつの間にか地上のガンスナイパーを達を全滅させていた。
「な、バカなっ!地上にいた奴らをあっという間に全滅させただと・・・」
「だから俺をなめてもらっちゃ困ると言ったろ」
「だがまだ谷の上にもまだいるんだぜ。流石に登ってこれまい」
「それはどうかな、あんた、よく周りを見てないだろ」
「何!?しまった!さっきのでこちら側にしかガンスナイパーがいないではないか!」
あたしも思わず上を見てみた。するとローダの言うとおり、谷の上の両サイドにいたはずのガンスナイパーは、いつの間にか黒いガンスナイパーのいる側にしかいなかった。
「気付くのが遅かったようだな」
そう言いながらローダのコマンドウルフは谷を登り始めていた。すかさず谷の上にいるガンスナイパー達は、ローダに向けスナイパーライフルを撃つが、全く当たらない。
それもその筈だ。ローダのコマンドウルフはジグザグにジャンプしながら登っているので、照準が合わせられないんだろう。動いていなかったあたしと違って。
そうしてる内にローダのコマンドウルフは谷の上まで登って姿が見えなくなったと思ったら、黒いガンスナイパーを含む数機のガンスナイパーと、ローダのコマンドウルフが上から降ってきた。
黒いガンスナイパーとローダのコマンドウルフはしっかりと着地したが、残りのガンスナイパーは思いっきり地面に叩き付けられ、動かなくなっていた。恐らく上でローダが倒したんだろう。
「ぐ・・・、気付けば戦えるのは俺だけか・・・」
「その様だな。もう諦めたらどうだ?」
ローダは明らかに盗賊団のリーダーに降参を促している。あたしなら絶対しないけどな。
「それもそうだな。もうこれ以上戦っても勝ち目は無いしな」
「なら話が早いな」
と、ローダのコマンドウルフが後ろを向いた瞬間、
「な〜んて、俺がそんな事言うとでも思ったか!」
と、ローダに向け一斉射撃をし始めた。やっぱりあいつ、諦める気なんてさらさら無かったんだ!
「危ないっ!ローダ!」
思わずあたしは叫んだ。ローダのいた所から大爆発が起きた。そんな、まさかローダがやられるなんて・・・
「がー、はっはっはっ!最強の傭兵と呼ばれたローダもここでやられたり〜」
「誰がやられたって?」
「その声はまさか・・・」
「ローダ!」
何とローダは、あたしも気付かない内に黒いガンスナイパーの背後にいたのだ。しかも無傷で!
すっかり倒したと思い込んでいた盗賊団のリーダーは、さっきまでの大笑いはどこへやら、うって変わって恐怖にも似た驚き様だった。
「てめぇが諦めたふりする位最初から分かってたんだよ。だから俺もわざと後ろに振り向いたんだよ」
ローダはそこまで考えていたのか。あたしもあいつが諦める気が無いのまでは分かってたけど、そこまでは考え付かなかったな。
「な、なぁローダさん。もう二度とやらないから見逃してくれよ〜、頼むよ」
何だよ、急に弱腰になりやがって!あたしに散々攻撃しといて、自分がピンチになるとこれかよ!全くを持って矛盾してるっつーの!
だけどローダはそんな事で見逃してくれる様な人じゃ無かった。
「・・・俺がそんな事で見逃すとでも思ったのか?」
「え・・・?」
「あの子のゾイドを散々攻撃しといて何が見逃してくれだ!甘ったれるんじゃねぇ!」
そう言いローダのコマンドウルフは、黒いガンスナイパーに向け爪を振りかざす。
「よ、よせ!うわぁぁぁぁ!!」
攻撃は見事にヒットし、ガンスナイパーが崩れ落ちる。
「さてと、後は治安局に任せてと、そろそろ戻るとするか」
「待って!」
「お?何だ?」
あたしはこの場を去ろうとするローダを呼び止めた。助けてくれたお礼が・・・言いたくて。
「あ、あのさ・・・ありがとう」
「な〜に、あれくらい大した事無いって。俺は依頼で来ただけだし、何より困ってる人を放っておけないしな」
あの時と同じ笑顔で彼は答えてくれた。あたしには嬉しかったな。
「さてと、そろそろ戻らないとな。待たせてる人がいる訳だし」
「戻るって、何処に?」
「あぁ、そういや言ってなかったな。戻るってのは、今俺が住んでる『傭兵の街』ってとこにな。それじゃ」
そう言いローダのコマンドウルフは、谷間の道から去っていった。
「『傭兵の街』か・・・、どこにあるんだろ。ってそれよりこれを届ける最中だったっけ」
あたしは届け物の事を思い出し、急いでノークタウンへ向かった。
* * *
何か盗賊団に襲われたりしたけど、何とかノークタウンへ辿り着いたあたしは、サイクスを決められたゾイドの停める場所に停めた。
こうして降りてから見ると、盗賊団の攻撃でボロボロになっていたあたしのサイクス。よくこれで動けるものだと自分でも思った程だ。
そしてあたしは、アリサから受け取った荷物と一緒に受け取ったミンヤの家の住所が書かれた紙を見ながら探し、ようやくミンヤの家を見つける。
「そういやミンヤに会うのって何年振りだろ?あたしの事覚えているかな?」
久々に会う友人の事を懐かしみながら、家のブザーを鳴らす。
「アリサさんからのお届け物でーす」すると扉が開き、中には友人でもあったミンヤが出て来た。
「はーい、ご苦労様って、あれ、イズキちゃんじゃない〜、久しぶり〜」
「あたしこそ久しぶり〜、ちゃんと名前覚えててくれたんだ」
「当たり前じゃない。友達だもの。って何でイズキちゃんがこれを届けたの?」
「まぁ、何と言うかアリサに頼まれてさ〜、一応これも仕事ってやつなのよ」
「そういやイズキちゃんって、今何してるんだっけ?」
「父さんがやってる会社でパイロットやってる」
「そうなんだ。だからイズキちゃんがあたしにこれを届けてくれたって訳か」
「ところで、この荷物って何なんだ?」
「あれ?アリサちゃんから聞いてなかったの?」
「いや、何も聞いてないけど」
「実はね・・・」
そう言い、ミンヤは受け取った荷物の箱を徐に開けだす。中に入ってたのは写真立てだった。しかも写真立ての中には懐かしい写真が入っていた。
「これって・・・」
「そう、これは小さい頃の私とアリサとイズキが写った写真が入った写真立てなの。ホントはアリサちゃんが直接渡そうとしたんだけど、
ほら私、突然こっちに引っ越したじゃない。それで渡せず、最近私が電話してやっと居場所が分かったまではよかったんだけど」
「例の盗賊団の襲撃の件があって、渡せず困っていたところに、ゾイドに乗れるあたしが届け人として選ばれた訳か」
「そういう事になるのかな。でも本当に届けてくれてありがとね。こうして友達にも会えた訳だし」
「そうだな。あたしもミンヤが引っ越した事アリサに聞くまで知らなかったしさ」
「そうだったんだ。あ、イズキちゃん。家にあがってく?」
「今日は遠慮しとくわ。また今度仕事じゃない時にでもアリサと一緒に遊びに行くね」
「うん、分かった。じゃあせめてお見送りだけでもさせて。いい?」
「ああ、いいよ」
「やったー」
あたしとミンヤは、サイクスが停めてある場所まで行き、あたしはサイクスに乗り込んだ。
「随分ボロボロだけど、もしかして盗賊団に襲われたりとかした?」
「全くをもってその通り。だけど途中あたしを盗賊団から助けてくれた人がいたんだ」
「大変だったんだね〜、それで助けてくれた人って一体どんな人なの?」
「その人はあたしよりもずっとゾイドの扱いが上手くて、それに困ってる人を放っておけない人だった」
「優しい人なんだね。その人」
「多分そうかもな。それじゃ行くわ」
「うん。絶対また来てね〜」
「分かった〜、また来るからな〜!」
そう言ってあたしはサイクスのキャノピーを閉じ、ノークタウンを後に、ユートシティへ戻って行った。
こんなにボロボロにしちゃったから、またツルヤには迷惑掛けちゃったな〜。
* * *
その夜、あたしはアリサと電話をしていた。
「何であの荷物の中身の事言わなかったのさ〜」
「ん〜、多分イズキなら覚えてるだろうな〜、と思ってた」
「だけどあたしは全く覚えてなかったけどな」
「それよりミンヤは元気だった?」
「あぁ、昔と全然感じは変わってなかったし、あたしの事もちゃんと覚えててくれてたしね」
「それはよかった。ところでイズキ大丈夫だった?」
「何が?」
「盗賊団の事よ」
「その事か、しっかりと襲われたよ。だけど、偶然盗賊団を追い払う人によって何とか助かったけどな」
「それはよかった。て事はその盗賊団はその後どうしたの?」
「治安局によって無事摘発されたらしい。だからもう心配する事無くノークタウンへ行けるって訳だ」
「良かった〜。これで安心してノークタウンへ行けるよ〜」
「それでさ、今度あたしが仕事休みの時でも一緒にミンヤに会いに行かない?」
「どうしたのさ急に?」
「ミンヤに約束したんだ。今度アリサと一緒に行くって」
「勿論私は賛成に決まってるじゃない。あとはアンタの休み次第」
「そうだな。今度仕事が休みの日になったら連絡するよ」
「うん。それまで私は待ってるよ。それじゃおやすみ」
「おやすみ〜」
そうして電話を切るあたし、今度の仕事の休みが凄く楽しみだ。
そう思いながら、あたしは布団を掛け、眠りについた。
#4 完、#5へ続く