#8 Surprise Birthday | 著/Ryuka |
「いいな、この事は絶対にイズキには内緒だからな」
「うん、分かってるよ」
「あとイズキにバレない様にしなきゃいけないわね」
「そうね、多分イズキちゃん今日誕生日な事忘れてると思うから、きっと驚くと思うわ」
「じゃあ、それぞれ担当する役割の通りに行動を開始しようか」
「それじゃ私達はヒロキ君の家で会場作りよね、必要なものは昨日の内に買ってヒロキ君の家に置いてある」
「僕は誕生日プレゼントを買ってくるんだったよね」
「俺はケーキ作り、スポンジは昨日の内に作っておいたから、あとは仕上げだけだ。出来次第ヒロキの家に持ってくる」
「じゃ一旦解散ね、全員ヒロキ君の家に集まり次第ミンヤがイズキを呼びに行くのよ」
「分かったわアリサちゃん」
* * *
8月12日、その日はイズキの16歳の誕生日であった。
ヒロキ、ライサー、アリサ、ミンヤはその事を知っていて(厳密に言えば知っているのはアリサとミンヤだけで、ヒロキとライサーは、2人からその事を聞いたからである。)、イズキに内緒で誕生日会の準備を進めていた。
その頃、今日誕生日である事をすっかり忘れている主役であるイズキはというと―――
「今日は仕事休みだし、何しようかな〜」
今日は仕事が休みで、特にする事も無かったので、暇つぶしにと外にぶらぶらと歩いていた。
「お、あそこにいるのはアリサとミンヤじゃん」
丁度少し先にいたのは、イズキの幼馴染であるアリサとミンヤであった。二人とは小さい頃からの付き合いである。
「お〜い、アリサ〜、ミンヤ〜」
「あ、イズキちゃん」
「あ、イズキ、今日仕事休みぃ?」
「休み、ところでミンヤいつからこっちに来てたんだ?」
「数日前かな、久々にこっちに来てみたくなったんだ」
「そうなんだ、でさこれからどっか遊びに行かない?あたし暇でさ〜」
「あ〜、ゴメン、今日はちょっと無理なんだ」
「折角会えたのは嬉しいけど、私達ちょっと用事があって・・・」
「そう・・・、用事があるなら仕方が無いよな、また今度遊ぼうな」
「ええ、そうしましょうね」
「じゃああたしは違う人に当たってみる事にするわ、じゃあな〜」
そう言い、その場を去っていくイズキ、その姿に笑顔で手を振るアリサとミンヤ。そして、やがてイズキの姿が見えなくなった。
「・・・ふぅ、危なかったわ」
「まさかあそこでイズキちゃんに会うとは思ってなかったからねぇ、私達の方が先に驚いちゃったね」
「全くよ、もうバレたのかと思って冷や冷やしたわ。でも」
「アリサちゃんの言う通り、イズキちゃん今日誕生日なの覚えてなさそうだったね」
「その方が私達にとっては都合が良いんだけどね」
「そうよね、さて私達も準備する為に行きましょ」
「そうね」
アリサとミンヤも、イズキの誕生日会の準備の為に、ヒロキの家へと向かっていった
* * *
アリサ、ミンヤと別れたあたしは、違う人を誘ってみる事にした。やっぱりここはヒロキを誘ってみようかなと思った時、丁度運良く少し先の所を歩いていた。
「ヒロキ〜」
あたしはヒロキに声を掛ける。
「ん?あ、イズキ〜」
いつもと変わらず笑顔で答えるヒロキ、あたしはヒロキのそういうとこが良い所だと思ってる。
「ヒロキさ、今日一緒にどっか行かない?」
「ゴメン、僕今日どうしても抜けられない用事があって・・・」
「え・・・、そ、そうだよね、抜けられない用事があるんじゃ仕方が無いよな、あははは・・・」
「ホントゴメンね」
「気にすんなって、また今度って事でさ、そ、それじゃ〜な」
あたしはヒロキから離れていった。ヒロキは何だか困った様な表情をしていたが、あたしはそれを無視するかの様に振り向かなかった。
暫く歩いて、あたしは街の広場にあるベンチに腰を掛けた。
「ひょっとしてあたし、さっきのでヒロキを傷つけちゃったのかな・・・」
でも、アリサもミンヤもヒロキも用事があるって言ってたけど、あたしに何か隠してるようにも思えるんだよな〜、も、もしかしてあたしの事が嫌いになって避けてるのかな?あたしを傷付けさせない為にあえてあんな感じで言ってるんだろうか・・・
もしそれが本当だったら、本音は・・・
『僕、ホントはイズキの事嫌いなんだ・・・』
『今まで黙ってたけど、私アンタの事嫌いだったのよ』
『私もアリサちゃんと同じで、イズキちゃんの事、あんまり好きじゃなかったの・・・』
「嘘だろ!?そんな事ないよな、みんな!?」
3人はあたしの言葉に聞く耳を持たず、あたしを避けるかの様に背を向け、歩き出す。あたしはそれを走って追い掛けた。
「ねぇ、ちょっと待ってよみんな!ねぇってば!」
3人は歩いている筈なのに、あたしがどんなに走っても追い付けない、むしろどんどん遠ざかっていく・・・、そして3人の姿が見えなくなり、あたしはその場で力無く地面に膝をつく。
「そんな・・・、こんなのあたし嫌だよ・・・」
「わ―――っ!!そんなの絶対に嫌だ――!!考えたくないっ!!!」
あたしは思わず大声を上げてしまった。周りにいた人達がこちらを見ている。するとその中の一人が、
「あの、君どうかしたの?」
「あっ、いや、な、何でもないんですっ!」
「そうかい、急に大声上げるから何かあったのかな〜って思ったんだが」
「すいません・・・」
「今度から気を付けなよ、その内変な目で見られるぞ」
あたしはあまりの恥ずかしさで顔が真っ赤になっていた。何バカな事やってんだろあたし・・・
だけど、あたしヒロキ達に嫌われるような事してたっけ?確かに怒りっぽいし、中々素直になれないし、変に強がったりするし、時々足引っ張っちゃう事もあるけど、そんな事で嫌いになったりするもんなのかな・・・?
あたしには分かんない、全然分かんないや・・・
* * *
イズキと別れた僕は、イズキのプレゼントを買う為、街のショッピングモールへと足を運んでいた。
「もしかしたらさっきのでイズキを傷付けちゃったのかも・・・」
自分では上手く断ったつもりでも、相手には傷付けてしまう事がある。さっきのはそのパターンなのかもしれない。
「何かイズキに悪い事しちゃった気分だな〜、って、そんな事よりもイズキが喜ぶ様なプレゼントを探さなきゃ!」
この前アリサちゃんとミンヤちゃんと話した時に、いつも身に付ける様な物として髪留めが良いんじゃないかって言ってたから、それにしてみようと思う。
どんなのが良いんだろ?やっぱり女の子だから可愛い感じの物の方が良いよね、きっとイズキも喜んでくれるはずだ。
「でも、可愛い感じの物ってどういった店に売っているんだろうか・・・?」
そうやって考え事しながら歩いていて、ふと横を見たら、
「あ・・・、こんな感じの店なのかな・・・」
見た先は、いかにも女の子らしい可愛い感じの物が沢山置いてある店だった。僕は引き寄せられるかの様にその店へ入っていった。
「いらっしゃいませ〜」
「わぁ〜、こういう店初めて来たな〜」
僕もどちらかと言うと可愛いものはちょっと好きな方かな、でもこういう店には入った事が無い。興味が無いかって言うとそれは嘘になるけど、何か入るのが恥ずかしくて、入れなかっただけなのかもね。
だけど、色んな物があって、何だか分からなくなってきそうだ。
「入ったは良いけど、結構色んな物が置いてあるんだな〜、そういや髪留めって何処に置いてあるんだろ?」
「何かお探しなのでしょうか、お客様」
髪留めが何処に置いてあるのかと辺りをキョロキョロ見てた時、この店の店員さんが僕に話し掛けてきた。丁度髪留めの置いてある場所を探していた僕にとって、十分な助け舟であった。
「えっと、髪留めを探してるんです。可愛い感じのを」
「それじゃこういうのはどうでしょう」
店員さんが差し出してくれたのは黄色い髪留め、決して可愛い感じかと言うとはっきりとは言えないけど、イズキにはピッタリ似合いそうな感じだった。
「じゃあこれ下さい」
「そうですね、お客様にとってもお似合いだと思いますよ」
「いや、僕じゃなくて、友達の誕生日プレゼントを買いに来ただけで、それに僕は男なんですけど」
「えっ!?し、失礼しましたっ!てっきり女の子と勘違いしていました。では別な物を・・・」
「いえ、これでいいです。友達は女の子なんですけど、凄く似合いそうな感じがしたので」
「そうですか、ではお会計はこちらです」
会計を済ませ、店を後にする事に。手にはしっかりと紙袋に入った黄色い髪留めを持って。
「にしても、まさか僕が女の子と勘違いされるとは思ってなかったな〜」
確かに僕は生まれつき女顔で、小さい頃はよく女の子と勘違いされてたっけ?最近そういうのが無かっただけに、久々にそう言われるとかなり恥ずかしかった。
「さてと、プレゼントも買ったことだし、家に戻ろうっと」
こうして僕は、会場の準備をしているアリサちゃんと、ミンヤちゃんがいる僕の家へ向かうことにした。
* * *
一方その頃、ヒロキの家では、会場の準備を終えたアリサとミンヤが、ヒロキとライサーが来るのを待っていた。
「会場の準備も終わった事だし、後はヒロキ君とライサー君が来るのを待つだけね」
「全員揃った時は私がイズキちゃんを呼びに行くんだったよね」
「そうよ、きっとイズキ驚くだろうな」
「この事は何も知らないからね、イズキちゃん」
丁度その時、”ピンポーン!”と家のインターホンが鳴ったので、アリサは玄関の扉を開ける。
「よぅ、会場準備は終わったのかい?」
扉の先にいたのはライサーだった。手には少し大きめの紙袋を持っていた。
「ライサーくん、丁度今終わったとこよ」
「そうか、ほれ持ってきたぜ、俺手作りのバースデーケーキ」
ライサーが持ってた紙袋の中身は、昨日から作っていたイズキのバースデーケーキが入っている箱であった。早速ライサーは家の中に入って、箱をテーブルの上に置き、箱からケーキを取り出してアリサとミンヤに披露する。
「すご〜い!これホントに一人で作ったの?」
「あぁ、スポンジからデコレーションに至るまで全部俺一人でな」
「普通にお店に売ってるケーキみたい」
「そんなもんじゃないわ、下手なケーキ屋のケーキよりも綺麗に見えるもの!」
アリサとミンヤが絶賛するのも無理も無かった、そのケーキはまるで、プロのパティシエに並ぶ様な素晴らしい出来栄えのケーキであった。「少し褒めすぎだろ、まぁ嬉しんだけどさ。そんな事よりもまだヒロキは来てないのか?」
「うん、まだ来てないよ」
「きっとプレゼントで相当迷ってるんじゃないかしら?」
「ヒロキ君もイズキちゃんを喜ばせたいから、迷うのも無理無いと思うわ」
その時、玄関の扉が開き、家の中に入ってきたのはヒロキであった。手にはリボンをあしらった小さめの紙袋と、何かが入ったビニール袋を持っていた。
「ごめ〜ん、少し遅くなっちゃって」
「そんな事無いよ、ライサー君もさっき来たばかりだし」
「そうなんだ、もしかしてテーブルの上に置いてあるケーキってライサーが作ったの?」
「まぁな、俺が一から作ったケーキだからな」
「凄く綺麗に出来てるね、見るからに美味しそうだよ」
「でしょ〜、私達もこれ見た凄いと思ったもの」
「食べるのがもったいない位って私思ったくらいだもん」
「いや、食べるもんだよミンヤちゃん」
「えへへ、そうでしたねライサー君。それよりもヒロキ君、その手に持ってる小さい紙袋って、イズキの誕生日プレゼント?」
「うん、とってもイズキに似合いそうな髪留め見つけたんで、それにしたんだ」
「じゃあどんなか私達に見せてくれない?」
「それはダメだよ、イズキが開けるまでのお楽しみ」
「え〜、ちょっとどんなのか見たかったなぁ」
「そうだぜ、プレゼントは貰う人が開けるまで楽しみにしてるってもんだぜ」
「そうよ、アリサちゃん。イズキちゃんが開ける前に私達が見ちゃいけないものでしょ(でも私もちょっと見てみたかったなぁ・・・)」
「そんな事よりミンヤちゃん、イズキを呼びに行かなくて良いのか?」
「そうね、何だかんだで全員揃ってたのね」
「いけない、じゃあ私イズキちゃんを探して呼んでくるね!」
ミンヤはイズキを探して誕生日会場であるヒロキの家に呼び出す為に、ヒロキの家から出て行った。
ミンヤが出て行って少しした後、ヒロキがビニール袋からある物を取り出した。
「こういう時に必要かなって思って、こんなもの買っておいたんだ」
「これパーティ用のクラッカーじゃない、ヒロキ君中々気が利くわね」
「お前が持っていたビニール袋の中身はこれだったのか」
ビニール袋に入ってたもの、それはよくパーティとかに使われるひもを引っ張ると中から細長い紙が何枚も出るタイプの手持ち式クラッカーであった。
「でもさ、イズキを呼びに行ったミンヤも驚くんじゃないのかしら?」
「確かに・・・」
「僕もそこまでは考えてなかったよ・・・」
イズキを呼びに行ったミンヤの事を考えてなかったヒロキなのであった。
* * *
「・・・ん〜、あれ?あたしいつの間に寝ちゃってたんだろ・・・」
あたしはいつの間にか寝てたみたいで、気が付くと空はオレンジ色に染まっていた。
「本当にみんなあたしの事嫌いになっちゃったのかな・・・」
思わず目から涙が出てきた。見掛けでは強がってるけど、ホントは凄くさみしがり屋なんだよなあたし。
自分の周りに誰もいなくなってしまう事が凄く怖い、だけど必死に強がってその弱みを隠そうとする自分がいる。
ただ本当の事を打ち明ければ良いだけなのに、いつも何かと誤魔化してる気がする。
素直になりたくても、中々なる事が出来ない。それがどうしてなのかはあたし自身全然分からない・・・
「ねぇ、何こんなところで一人で泣いてるのイズキちゃん?」
「うぇ、え!?み、ミンヤ!?」
「やっと見つけたよ〜、私ずっとイズキちゃんを探してたんだ」
突然あたしの目の前に現れたのはミンヤだった。でもちょっと待って!
「だけど今日用事があるって・・・」
「うん、まぁ確かに用事はあったにはあったんだけどね」
「でも何でここにいるんだ!?」
「実はイズキちゃんに着いてきて欲しい所があって」
「あたしに着いてきてもらいたい所・・・?」
「今から私に着いてきてくれるイズキちゃん?」
「別に・・・いいけど」
「それじゃ決まりね」
あたしは状況も良く分からないまま承諾しちゃったけど、一体何なんだろ?それにやけにミンヤが笑顔だし。
何処に向かうのか分からない中、あたしはどうしても聞きたい事をミンヤに打ち明ける事にした。
「ねぇ、ミンヤ。あたし、聞きたい事あるけどいい?」
「いいけど、どうしたの急に?目的地の事なら着いてからのお楽しみよ」
「いや、そうじゃないんだ。ミンヤさ、あたしの事・・・嫌い?」
「へ?一体どうしたの!?そんな事急に言って!?」
「ミンヤだけじゃない、アリサもヒロキもあたしの事嫌いなんじゃないかって思って・・・」
「・・・・・・そんな訳無いじゃない、イズキちゃんを嫌いになる理由が無いもの。それはアリサちゃんやヒロキ君も同じ事だよ」
「でもあたし、滅茶苦茶な性格だから、ひょっとしたらウザいと思われてんじゃないかって」
「考え過ぎよ、イズキのそういった所が良いじゃない、きっとアリサちゃんとヒロキ君がここにいたとしても、2人は私と同じ答えを言うはずよ」
「・・・そ、そうだよね。あたしちょっと考え過ぎてたみたい」
「そうよ、きっと(私達はイズキちゃんの誕生日会を隠してたつもりでも、イズキちゃんはそんな事思ってたなんてね・・・、ちょっとイズキちゃんに悪い事しちゃったかな?)」
やっぱりあたしの考え過ぎだったみたい、ミンヤに言われてやっと気付いたよ。ちゃんとミンヤ達はあたしの事嫌いなんて思って無かったみたいだし、ホント良かった・・・。内心凄くホッとした気分だよ。
「あ、あのさ・・・、この事はみんなに内緒にしといてくれない?みんなに言われると・・・すっごく恥ずかしいし・・・」
こんな事言うのはどうかと思ったけど、やっぱりみんなには言いたくも無いし、言われたくも無かった。だって、いつものあたしらしくないじゃん。
「心配しなくても私とイズキちゃんだけの秘密にしてあげるよ」
「良かった・・・」
「さ、早く行きましょ、イズキちゃん」
「うんっ!」
* * *
ミンヤに着いていったあたしは、ミンヤが言う目的地に到着した。ただそこは見た事がある場所だった。
「ここって、まさか・・・」
「そう、ここはヒロキ君の家よ」
確かにここは紛れも無くヒロキの家だけど、でもなんでミンヤがここを?
「って、何でミンヤがヒロキの家知ってるんだ!?」
「これにはちゃんとした理由があってね」
「どんな理由なの?」
「それは家に入ってからのお楽しみ」
「そう、じゃあ家の中に入ってみるよ」
あたしは何かあるんじゃ無いかと思って、恐る恐るドアノブに手を掛け、ゆっくりとドアを開ける。
パーン!パーン!パーン!
「!」
「「「お誕生日おめでと〜」」」
「えっ!?何々!?」
あたしはこの状況が全く読めなかった。家の中にいたのはヒロキにライサー、それにアリサまでいた。
にしてもお誕生日おめでと〜って、一体どういう事??
「イズキ、今日何の日か覚える?」
「え、え〜と・・・、何の日だっけ?」
正直パニック状態のあたしにそんな事聞かれても全く分からなかった。
「8月12日、今日はイズキの誕生日でしょ」
「そ、そうだったっけ?」
「イズキちゃん、今まで隠しててゴメンね、私もアリサちゃんもヒロキ君も用事があるって言ってたけど、全てこの事を隠す為だったの(でもあの出迎えは私も知らなかったんだけどね)」
「そういう事だったんだ・・・、あたし今日誕生日なのすっかり忘れてたよ」
「まぁ今回ヒロキ君とライサー君にも手伝って貰ったのよ」
「でもヒロキとライサーにはあたしの誕生日の事は言ってないはずだよね」
「確かに言ってないな」
「僕とライサーはアリサちゃんとミンヤちゃんからイズキの誕生日の事を聞いたんだよ」
な〜んだ、それならあたしの誕生日の事をしっていてもおかしくはないよな。
「イズキの誕生日会の為に私達力を合わせて頑張ったのよ」
「私とアリサちゃんのプレゼントは、この会場、デコレーションもそうだけど、場所もイズキが喜んで貰えると思ってヒロキ君の家にしたの」
「俺からのプレゼントはこのケーキだ。全部俺一人で作ったんだぜ」
「みんな・・・」
みんなあたしの誕生日の為に、こんなにもしてくれて・・・、とっても嬉しいよ。ライサーが作ったケーキは見るからに美味しそうで綺麗だし、アリサとミンヤの会場のデコレーションも中々可愛らしいくていい感じだよ。
「ヒロキ君のプレゼントの前にまずはイズキちゃんを祝わなきゃね」
「そうね、みんなでイズキを祝いましょ」
「まずはその前に、ろうそくに火を点けて、部屋の電気消してと、よし準備は出来たぜ」
「それじゃいくよみんな」
部屋の電気が消え、ろうそくの火の灯りだけの中、ヒロキ達はあたしに誕生日の祝いの言葉を掛けてくれた。
「「「「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー、
ハッピーバースデートゥーユーディアイズキちゃ〜ん、
ハッピーバースデートゥ〜ユ〜」」」」
あたしはろうそくの火を勢いよく吹いて消した。一度に全部消せなかったので、何度も息を吹いて全部のろうそくの火を消した。
そしていよいよヒロキのプレゼントを貰う時が来た。どんなプレゼントなのか楽しみで仕方が無かった。
「最後に僕からのプレゼントだよ」
ヒロキはあたしに誕生日プレゼントとして、リボンをあしらった小さな紙袋をくれた。
「ありがとう、それじゃ早速開けるね」
「私達も楽しみなんだよね」
「俺もまだヒロキのプレゼントの中身は見てないからな」
あたしは、ヒロキから貰った紙袋を早速開けてみた。中には黄色い髪留めが入っていた。
「いつも身に付ける物をって選んでた時に、イズキにとっても似合いそうな髪留めを見つけたんでそれにしたんだ」
「ヒロキ・・・」
「僕からのお願いなんだけど・・・、その髪留めをいつも付けてもらえると嬉しいなぁ〜って」
「当たり前じゃないか・・・、折角ヒロキに貰ったんだもの、付けるに決まってるじゃないか」
「ありがとう、イズキ」
「こちら・・・こそ・・・」
あまりの嬉しさに思わず涙がこぼれた。こんなにも嬉しい思いでいっぱいの誕生日は今日が初めてだよ・・・。
「みんな・・・、本当に・・・ありがとう・・・」
「イズキちゃん・・・」
ミンヤもいつの間にか泣いていた。多分あたしが泣いているのを見てもらい泣きをしたんだろう、でも一緒に泣いてくれる人がいてとても嬉しいよ・・・
「何か最初考えたのとは全然違ってたわね」
「まぁいいじゃねぇか、アイツは泣くほど喜んでくれたんだ。それでいいじゃないか」
「それもそうね、どの道あの子には喜んで貰いたかったから」
「暫くそっとしておこうよ、何か邪魔しちゃいけない気がしてさ」
「だな、あの2人が落ち着いてから誕生日会の続きをしようぜ」
ヒロキとライサーとアリサが見る中、ミンヤと一緒に泣いていたあたし、何かいつものあたしに無いとこみんなに見られちゃったな、でもそんな事、今はどうでもいいや。
暫くして落ち着いたあたしは、純粋に誕生日会を楽しんだ。みんなでライサーが作ったケーキを食べて揃って美味しいと言ったり、ゲームをして笑いあいながら楽しんだりしていた。
その時アリサがあたしにこんな事を言ってきた。
「折角だからさ、ヒロキ君が買って来てくれた髪留め、今付けてみたら?」
「そうね、私、髪留め付けたイズキちゃん見てみたい!」
「折角貰ったんだから、今付けてみるのも悪くないと思うぜ」
「僕も見てみたいなぁ、僕が買った髪留めだから絶対似合うと思うよ」
「じゃあみんながそんなに言うなら、付けて・・・みようかな」
「そうしなよ」
「うん、そうする。じゃあちょっと待っててね」
2分後・・・
「どう、似合ってるかな・・・?」
「とっても似合ってるじゃないイズキ」
「前より可愛くなった感じがするよイズキちゃん」
「良い感じに似合ってるなイズキ」
「とっても似合ってて可愛いよ、イズキ」
「みんなにそう言われると照れるな・・・」
こうして楽しかった時間はあっという間に過ぎ、帰る時間がやってきた。
「みんなありがとな、こんなに楽しい誕生日会開いてくれてあたしとっても嬉しかったよ」
「嬉しくて何よりだな、そうでなきゃこの誕生日会を開く意味が無いからな。それにアリサちゃんやミンヤちゃんがいてくれたから出来た事だしな」
「そんな事無いわ、ライサーくんやヒロキ君がいてくれたからなし得た事よ」
「イズキが楽しんでもらえて、僕もとっても嬉しいよ」
「私もイズキちゃんの喜ぶ姿をみて、とっても嬉しかったわ」
「みんな本当にありがとう」
「それじゃそろそろお開きとしますか、あんまり遅いと親達のいる家は親が心配するからな」
「それもそうね、この辺で帰りましょうか?」
「今日イズキちゃんのとこ泊まりに行っていい?」
「うん、いいよ。じゃああたし達はこれで失礼するね、髪留めありがとなヒロキ」
「うん、それじゃまたね、みんな」
ヒロキの家を後にし、そしてライサーとアリサと別れたあたしとミンヤ。
「イズキちゃんの家に泊まるの何年振りだろうね?」
「多分ミンヤが引っ越す前だと思うな」
「寝る前一緒に話でもしましょう、イズキちゃん」
「そうだな、あたしもミンヤと話がしたかったんだ」
いつ位だろう、こんなにも楽しい気分でいられるのは。ありがとうみんな、あたしにとって最高の一日だったよ。
#8 完、#9へ続く